ロックダウン解除でコロナ離婚ラッシュ 役所の手続きに1か月待ち

   2か月ぶりに封鎖が解除された上海で、役所に離婚の手続き希望者が殺到し、1か月待ちとなっているという。中国のSNSでは「(離婚は)ロックダウン中に外出するくらいの難易度」「離婚手続きも封鎖」と話題になり、コロナ禍後の消費のV字回復を指す「リベンジ消費」にちなんだ、「リベンジ離婚」という言葉も生まれた。

上海では今もこうした光景が(2022年6月15日撮影)(写真:ロイター/アフロ)
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6月は既にいっぱい

   新型コロナの感染拡大で、2022年3月下旬に始まった上海市のロックダウン。当初は8日間のはずだったが、感染が収束しなかったため5月31日まで延長された。

   6月1日に封鎖はおおむね解除され、消費や経済の回復が期待されているが、間もなくSNSで話題になったのが「離婚申請の予約が取れない」というニュースだった。上海各地区は感染対策もあり結婚・離婚の申請を事前予約制としているが、既に6月の予約はいっぱいで7月まで待つ必要があるという。

   SNSの情報を基に取材した現地メディアによると、地区によって状況は違う。南西部の奉賢区は毎日30組の離婚申請を受け付けており、即日、翌日の予約は難しいものの「ひっ迫」とまでは言えないという。 一方、上海市内でも感染が最も深刻だった市中心部近くの徐匯区は、1日に12組しか離婚手続きの予約を受け付けておらず、1か月先まで予約が取れない。1日の予約枠が20組ある結婚手続きは、多少の空きがあるという。

「リベンジ離婚」が発生する

   各地区が離婚申請の予約を絞っているのは、感染対策に加え、ロックダウン前に予約が入っていた離婚申請への対応を優先しているからのようだ。

   2か月のロックダウン中、市民は厳しい外出制限を強いられ、生活必需品の調達も共同購入による配達に頼る生活だった。徐匯区は3月7日から5月31日まで結婚・婚姻の手続きを停止しており、他の地区も似たり寄ったりとなっている。4月は上海市内で車が1台も売れなかったが、同じように離婚も1件もなかった。

   中国では武漢封鎖が解除された2020年春以降、停滞していた消費が爆発的に回復し、「リベンジ消費」と呼ばれた。今回の上海ロックダウンでは、3~5月に離婚したくても窓口が開いておらず申請できなかった人たちによる「リベンジ離婚」が、今後間違いなく発生すると言われている。

   中国は感情に流された離婚を防ぐため、離婚申請から1か月の冷却期間を置き、それでも意志が変わらなければ正式手続きに入る「離婚冷静期」制度を、昨年1月に導入した。上海市の役所には2~3月に離婚申請を行い、ロックダウン中に冷静期が満了した人から「封鎖期間の日数は冷静期にカウントされるのか」の問い合わせも多く、役所は対応に追われているという。

食料危機で亀裂の夫婦も

   上海当局は「リベンジ離婚」「ロックダウン解除後の離婚激増」説について、2020年初めの武漢パンデミックの後も離婚申請の予約が取りにくくなったと説明。その上で、同年1~5月の結婚手続きが3万3150件だったのに対し、離婚は1万6307件だったことを挙げ、「感染対策などで1日の申請受け付けに上限を設けていることから、予約が取りにくくなっているだけで、全体で見れば離婚が急増しているわけではない」との見解を示した。

   ただし、2か月超にわたる外出制限で関係に亀裂が入った夫婦は少なくない。

   特にロックダウン初期の4月初旬は食料の配給システムが未整備で、上海市全体が食糧難に陥ったことから、あちらこちらで食べ物をめぐる争いが頻発した。ある女性がSNSに「残り二つしかないカップラーメンと夫が一つと半分食べ、残りの半分を子どもに食べさせた。私の分は残してくれていなかった。私はカップ麺以下の存在だ」と、汁だけ残された容器の写真を投稿。「2杯のカップ麺事件」として大拡散するなど、家族の危機もあちこちで報告された。

   ロックダウン期間に離婚を決意した夫婦が封鎖解除明けに離婚を申請したとしても、予約ができるのが1か月後、さらに1か月の冷静期があることから、実際に数字として表れるのは秋以降になりそうだ。

【連載】浦上早苗の「試験に出ない中国事情」

浦上早苗
経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。「中国」は大きすぎて、何をどう切り取っても「一面しか書いてない」と言われますが、そもそも一人で全俯瞰できる代物ではないのは重々承知の上で、中国と接点のある人たちが「ああ、分かる」と共感できるような「一面」「一片」を集めるよう心がけています。
Twitter:https://twitter.com/sanadi37

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