「40キロ痩せても幸せになれなかった話」作者直伝 心を病まないためのマインド

【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招いて、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。
未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?

   第3回のゲストは、山下さんと同じ東京造形大学出身で、イラストレーター・マンガ家のやじまりさん。テーマは「心を病まない漫画家・イラストレーターのマインド」だ。スペースアーカイブはこちらから。

(左から)やじまりさん、山下諒さん
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嫌なことからは、遠慮なく逃げて

   コンテンツ企画・制作会社のチョコレイト(東京都渋谷区)に勤める、やじまりさん。2022年8月8日に単行本が発売されたエッセイマンガ「40キロ痩せても幸せになれなかった話」は、LINEマンガで配信後、150万ビューを獲得した話題作だ。創作時は「自分との対話、対峙」を繰り返していた。誰にも言えない思いや孤独感を抱えており、SNSを見たり、発信したりするのが難しい時期があったそうだ。

   やじまりさんは、自分の心を守るためにSNSから離れることにした。それで周囲との関わりが絶えたわけではなく、「身近な人や、知り合いの作家から声をかけてもらったときに、人に恵まれていたのだ」と気付ける余地ができたそうだ。「40キロ痩せても幸せになれなかった話」がLINEマンガで配信され、読者からコメントが寄せられた際には、「マンガは一方的に投げかけるものではなく、コミュニケーションだった」と思い出した。

   やじまりさんは、SNSにもマンガを投稿している。過去に、作品へ否定的なコメントが寄せられたとき、「私は図太いから大丈夫だと思っていても、数が多いと次第に『おかしいのは私なのではないか』と落ち込んでしまった」と明かし、SNSから距離を取ったという。マンガ家としてSNS上で活動ができない負い目に苛まれた経験もあるが、「自分の作品や、ものづくりを好きでい続けること」を優先してきた。

やじまりさん「今、一時的に作ることをやめたとしても、10年、20年後によい作品を生み出せるかもしれない。創作を嫌いになったり、心を病んだりしないのが一番。嫌なことからは、遠慮なく逃げていいんです」
山下さん「『つらい状況に置かれていることが当たり前』だと思ってはいけないよね」

   心ない言葉に傷つかないよう注意を払うと同時に、やじまりさんは「人の悪口を言って、自分が満足するだけの、独りよがりの作品を手がけない」ことをポリシーにしている。

やじまりさん「創作物は、どこかで誰かを傷つけていると思っています。それでも、自分の中で『ここまでやってはいけない』ラインを決め、守っていかなければなと」
山下さん「作品に怒りや悲しみをそのままぶつけるんじゃなく、感情の取捨選択をするのが大事だなと思う。一度冷静に俯瞰(ふかん)して、特定の人間に対する悪口になっていないか見ないといけないよね」

「社会の決まりに縛られることへの反抗」が原動力

   スペース終了後の二人に、話を振り返ってもらった。山下さんは、「物を作るということにとらわれ過ぎて、メンタルケアを怠り、逆に物を作れなくなってしまった人は多い」と話す。そんな人が傍にいたとき、やじまりさんの話を思い出して、「声高に『逃げろ!』と言えるようになりたい」。

   やじまりさんは、改めて「『~しなきゃいけない』という、社会の決まりに縛られることへの反抗がクリエイティブの原動力だ」との思いを強めたそうだ。「あれ、おかしいな?」という自分の感性を信じてあげることが、クリエイターにとって一番難しく、大切だと忘れないようにしたいという。同時に、山下さんとの対談を通じ「人に物事を伝えるのが得意分野だと、自信を持った」。


やじまり流「心を病まないためのマインド」を明かした

   やじまりさんが衝撃の実話を描いた「40キロ痩せても幸せになれなかった話」は、単行本が発売したばかり。「とっっても良いエッセイマンガだったので、みんな買ってね」(山下さん)。

   第4回作リエは、2022年8月24日実施予定。

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