「国産スマホ」絶滅の危機? メーカー減るなか「再起」に必要なのは

   国内でスマートフォン(スマホ)を手がける企業が消滅しつつある――。こう指摘する報道が相次いでいる。近ごろ、京セラでは個人向けスマホ販売からの撤退が、FCNTではスマホ製造や販売事業の停止が発表されたからだ。

   2023年5月30日付日本経済新聞(電子版)は、国内でスマホを製造するのはソニーグループとシャープだけと報道。またシャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下にあるため、5月31日付産経新聞(電子版)は「残る国内大手は実質的に『エクスペリア』シリーズのソニーグループのみ」と伝えている。このまま、国産機種はスマートフォン市場から姿を消すのだろうか。

FCNTが2021年12月3日に発売した「arrows We F-51B」 (同年11月25日のFCNTリリース資料から)
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スマホ販売伸び悩む

   富士通のモバイルフォン事業本部を前身とし、「arrows」シリーズや「らくらくスマートフォン」で知られるFCNT。業績悪化を背景として2023年5月30日に民事再生法の適用を申請し、携帯端末の製造や販売事業の停止を発表した。

   「かんたんスマホ」シリーズや「G'zONE TYPE-XX」を手がける京セラは、5月16日に一般消費者向けのスマホ販売事業から撤退する方針を発表。低収益なコンシューマー向けスマートフォンを縮小させ、収益性の改善を図るとしている。

   振り返れば、国内の大手家電メーカーではパナソニックやNECが2013年に国内個人スマホから撤退。2021年には「バルミューダ」がスマホ事業に参入し「BALMUDA Phone」を発売したものの、23年5月12日に携帯端末事業の終了を発表した。

   携帯電話やモバイル専門のライター・佐野正弘氏に取材した。日本市場では、スマホはすでに飽和状態にあり、性能面での進化の停滞も背景として買い替えサイクルが長期化しているという。さらに2019年の電気通信事業法改正などにより店頭での大幅値引きには規制が加えられ、もともと販売が伸び悩んでいたと指摘する。

   またコロナ禍では、スマホに使われる半導体が不足し高騰。22年からは円安の進行で端末価格を値上げせざるを得ず、販売が落ち込んだ。結果として、世界市場でのシェアが小さい国内メーカーは限界を迎え、撤退や破綻が相次いだと分析する。

価格面がカギに?

   今後、国内スマホが「再起」するには、メーカーはどうすればいいか。記者が聞くと、佐野氏は「日本市場を取り巻く問題はいずれもメーカーの努力だけで解決するのは難しい」と話す。むしろ、成長が見込めないとして海外メーカーまでも日本市場から撤退する事例が出る可能性もあるという。

   一方、国内メーカーが市場から消えればシニア、子ども向けといったニッチな需要に応える端末の開発が困難になるだろうと佐野氏。また、経済安全保障(生活に必要な物資の確保など経済的手段で国民や国家の安全を実現すること)の観点から多くの問題が発生し得る。

   状況を改善するには「スマートフォンの値引き規制を大幅に緩和する」など、政府が何らかの対処を行なう必要があると分析した。

   国産スマホを所有し普段使用しているか、記者は20代の男女5人に取材した。そのうち2人が国産スマホを使っていると語った。

   20代男性Aは「BALMUDA Phone」を所有している。発売当初は10万円超で高価格帯の機種だったが、携帯電話ショップで2万円弱の値段で安売りされていたために、購入したという。「楽天モバイルに対応しており、FeliCa(おサイフケータイに用いられる技術)も使えて便利なので」と使っているとのことだった。

   20代男性Bは、FCNTの「arrows We F-51b」を使用。利用する通信会社のキャンペーンで、機種代0円で入手した。特筆した強みは無いものの、おサイフケータイが使えるなど、最低限の機能が備わっている点を気に入っているという。「国産(スマホ)には安さと安心感を両立して欲しい」と語った。

   ほかの20代女性C、D、EはいずれもiPhoneシリーズを使用している。iPhoneのように使いやすい機種や、より安価な端末が発売されれば国産スマホを検討するとの声が出た。

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