日曜コラム:フィルム映画よ、サヨウナラ 着々進む「デジタル・シネマ」

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   イタリアのジュゼッペ・トルナトーレ監督の名作「ニュー・シネマ・パラダイス」を覚えているだろうか。隣町の映画館からオートバイでフィルムを運ぶ途中にエンコして届かず、映画館で待ちくたびれた観客が騒ぎ出す。

全館デジタル上映が可能な「新宿バルト9」撮影:源賀津己
全館デジタル上映が可能な「新宿バルト9」。このビルの9階から13階に9つのシアターがある(撮影:源賀津己)

   こんな心配は段々無くなりつつある。映画業界ではフィルムを用いずにHDDやDVDなどに保存した映画データをDLPプロジェクターで上映する「デジタル・シネマ」への移行が進んでいるのだ。上映用フィルムのプリント費は1本30万円強で300スクリーンの上映はざらだから、その度に1億円が吹っ飛ぶ。デジタルなら「ニュー・シネマ・パラダイス」のような輸送の手間は不要、HDDなどでデータを保存し、衛星やケーブルでも遠隔地へ送れる。ガサが大きいが故の保管費なども要らない。なによりもフィルムの劣化や損傷も無く映画作家の意図通りの上映が可能、などと良いことばかりだ。

   それなら総てデジタル上映にすれば良いのだが、何と言ってもデジタル・プロジェクターが高い。当初は一台3,000万円もしていたが、最近では2,000万円を切る機種も発売されている。しかし中小企業の映画館主に賄える金額では無い。日本では東映の岡田社長が熱心にこの次世代上映方式に力を入れている。新宿に新設されたシネマ・コンプレックス「バルト9」では9スクリーン全部がデジタル上映可能である。日本では全国で80館ほどが上映設備を整えているものの、3,000を越すスクリーンの全体数から考えると、まだまだ行く途は遠い。

   ハリウッドに本部を置くDCI(Digital Cinema Initiative)は、この映写および配給に関する技術仕様を制定するため、2002年に7大メジャースタジオによって設立された業界団体で、2005年7月にDCI仕様が発表された。DCIはデジタル・シネマの配給から興業までのプロセスについて、DCI仕様の最高水準となる4K規格(4,096×2,160ドット/800万画素クラス)と、2K規格(2,048×1,080ドット/200万画素クラス)の2方式での上映をテストして来た。800万画素と200万画素ではキメの細かさ画像の鮮明さが違うことは明らかだ。

   日本の既存デジタル・シネマ館はこの2K規格の方式だが、一昨日(6月1日)の金曜日にロスアンジェルスで4Kのフォーマットで上映できる映画館「the Landmark」がオープンした。上映機種はSONYのSXRD 4K digital cinema projectors。もっともSONY以外の他社には生産する能力が無い(パナソニックは2Kの生産はしている)。Landmark社は更に25台をSONYに発注している。LA以外にアトランタ、ボストン、シカゴ、ダラス、インディアナポリス、NY、サンフランシスコなど12都市に4Kのデジタル上映館を建設予定だ。

   日本が2K上映方式でモタモタしているうちに、アメリカでは4Kの世界に突入している。SONYもお膝元なのだから、もう少し日本の映画会社を刺激する必要がある。

恵介
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