2024年 5月 5日 (日)

日曜コラム:急成長するハリウッドの「ネット宣伝」

   雑誌や新聞など印刷媒体はいまや、映画を見させるメディアとして影響力を失っている。

   昔はアメリカで上映されてから日本へやって来るのに1年かかった。しかし今では海賊版の恐れからアメリカとの同時公開は当たり前、逆に本家より先行上映すらある時代になっている。また最近は映画完成が上映ギリギリになることも多い。スティルも直前まで揃わないから、映画評は公開1か月前に入稿しなければいけない雑誌には書けない。おまけに映画コア層の若い女性の活字離れ。雑誌はともかく新聞など読まない女性はゴマンと居る。

映画宣伝予算の「8割」はテレビへ流れ込む

   映画館に足を運ばせる媒体はTVだ。映画の予告編が一番インパクトのあるのは自明の理だが、TVは番組紹介やスポットでその一部を見せてくれる。配給会社の殆どはマーケティング予算の70-80%をTVに配分する。ディズニーやワーナーブラザースなどの映画配給が年間40億円になんなんとする費用をTVに使う。

   映画が大作であれば、新聞にも1、2か月前にカラー全ページ見開きの広告を掲載するが、観客より興行主や関係者向けに重きを置く。むしろ雑誌や新聞に代わり映画マーケティングで脚光を浴びているのはインターネットだ。今や日本人8000万人がPCや携帯でネットに繋がる。映画の公式ウェブサイトや映画会社HPへアクセスして映画予告編をチェックし自分好みの映画を選び、内容を理解させるのはネットだ。更に友人家族への口コミに広がる。鑑賞当日に映画館を探して上映時刻を調べるのは携帯の独壇場だ。

   アメリカでは映画専門紙「ハリウッド・レポーター」が最新のネット宣伝を伝える。自社サイトや映画公式ページへアクセスさせて興味を抱かせ、映画館へ足を運ばせるのは日本と同じだ。広告手法は、TVや新聞などの旧媒体からブログやピア・トゥ・ピアなどの新種のメディアまで千差万別だ。宣伝ツールとして全盛だった5-6年前のオプト・イン・メール(相手の了承を得て送るメール)がスパムやスクリーニング技術で半減していて、直接アクセスを促す手法が主流になっている。

恵介