2024年 4月 30日 (火)

安倍政権、財政健全化の道筋を描けるか 財務省「社会保障の削減が不可欠」

   2013年度予算が成立し、財政運営の焦点は中長期的に財政健全化をいかに進めるかに移る。政府は経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で議論を本格化させるが、長期金利も不安定化する中、8月をめどにまとめる中期財政計画で、財政健全化の道筋を描けるかが課題になる。

G20でも「公約順守」求められる

   2013年度予算の総額は92.6兆円。安倍政権はこれと10兆円規模の2012年度の大型補正予算を一体とする「15か月予算」を標榜し、計100兆円を超える大盤振る舞いを実施。これを「アベノミクスの第2の矢」と位置付けている。ただ、2013年度は約43兆円の国債を発行するため、年度末には国債発行残高が遂に1000兆円に達する見通しで、財政健全化の道筋を示さなければ国債暴落もあり得るとの懸念が市場で広がっている。

   財政の見通しについて、今のところ安倍政権は前政権時代からの目標を引き継いでいる。財政の健全度を示す国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字の名目国内総生産(GDP)比率を、2010年度の6.6%から2015年度に半減し、2020年度に黒字化するという「財政健全化目標」だ。

   2010年6月にカナダ・トロントで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議で表明して国際公約になり、今年4月19日のG20財務相・中央銀行総裁会議の共同声明も、日本は名指しで「信頼に足る中期財政計画を策定すべきだ」と公約順守を求められた。

「中期財政計画」の策定は選挙後の8月

   今後、諮問会議が6月に経済財政運営の基本方針となる「骨太の方針」を決め、健全化の道筋をより具体的に示す「中期財政計画」の策定は選挙後の8月ごろになる見通し。だが、内閣府の試算では2013年度のPBは6.9%に悪化するように、目標達成のハードルは高い。

   このため、目標を維持するのか、新たな目標を定めるか、政府内でも考え方の違いは表面化している。菅義偉官房長官は4月22日の諮問会議で「2015年度半減」について「あまり固定化しないでもう少し様子を見てはどうか」と語るなど、目標達成時期の先延ばしを示唆。これに対し麻生太郎副総理兼財務相や甘利明経済財政相は「今の段階で目標を変えることは考えていない」、「目標はそのまま堅持していく」と強調する。

   安倍首相は、菅氏の発言について「専門家のいる諮問会議で(健全化目標を)進めることは可能かどうか(確かめる)との意図だ」(5月1日、サウジアラビアで)と、見直しの議論を妨げない意向を明らかにしており、政権としての方向性はまだ見えない。

企業の国内投資はまだマイナス

   中長期の財政を考えるポイントは、成長率、金利、歳出削減の3つ。16日発表の2013年1~3月期のGDP実質成長率は年率換算3.5%と1年ぶりの高成長になり、アベノミクス効果による株高などを背景に個人消費が堅調で、米国経済の回復などで輸出も好調だったが、企業の国内設備投資はまだマイナスであるなど、高成長が続く保証はない。

   一方で、アベノミクスの副作用ともいえる金利の不安定化が表面化している。日銀は国債を市場で大量購入して長期金利を低下させるとしていたが、市場で売買できる国債が減り、価格が乱高下することへの懸念などから国債購入を手控える投資家も多く、金利上昇を招いた。

   財務省は名目成長率3%、長期金利は2.5%に上がるとして財政の先行きを試算しているが、成長による税収の押し上げ効果が期待できる半面、国債の利払いも嵩むため、元利払いの支出(国債費)は2013年度22.2兆円から2016年度に28.7兆円に膨らむとしていて、財務省は「社会保障を中心に歳出削減が不可欠」(幹部)と訴える。

選挙前に「痛み」を盛り込めるか

   黒田日銀は金利上昇に歯止めをかけることに全力を傾けるが、「財政健全化が緩むとヘッジファンドの国債売りや格下げの要因になりかねない」(エコノミスト)。麻生財務相は「目標をきちんと達成する意思を示さないと、国債の信用が落ちる」と、中期計画で財政健全化の方向性を示す考えを強調している。

   ただ、7月に参院選前を控え、財政規律を訴えにくい。16日の諮問会議では社会保障について民間議員から根本見直しを求める声が出たが、安倍首相は「小泉内閣の反省を踏まえ、国民と思いを共有していきたい」と述べ、小泉政権が定めた社会保障費削減の数値目標に否定的な考えを示した。選挙前にまとまる「骨太の方針」に歳出削減や負担増など国民に痛みを求める内容をどこまで盛り込めるかは未知数だ。

   来春の消費増税に向け、景気を腰折れさせられないことから、来年度予算も甘めの編成になるとの見方が与党内で早くもささやかれるなど、財政健全化の道筋を描くのは容易ではなさそうだ。

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