2024年 4月 29日 (月)

北朝鮮が突然「対話路線」、何が起きた? 韓国に「開城正常化・金剛山観光再開」を提案

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   周辺諸国に対して強硬姿勢を続けてきた北朝鮮が、対話路線を打ち出した。つい2か月ほど前までは、操業停止中の開城工業団地について「広い地域を軍事地域に再びつくり…」と閉鎖後の用途に言及するほどだったが、2013年5月中旬には「忍耐力をもって注視している」と多少態度を軟化。6月に入って、さらに柔軟姿勢を見せた形だ。

   特筆すべきは08年の韓国人観光客の射殺事件をきっかけに凍結されていた金剛山(クムガンサン)の観光事業について突然言及したことだ。声明では「今回の機会を逃がしてはならない」という表現もあり、追い詰められているとも受け止められそうだ。大きな姿勢の変化の背景には何があるのか。

再開求めているのは韓国側だという体裁は維持

   南北の窓口機関にあたる祖国平和統一委員会は2013年6月6日、「特別談話文」を国営朝鮮中央通信を通じて発表した。この声明は、これまでになく韓国側に歩み寄った内容だ。

   声明では、

「南朝鮮(韓国)の企業家は、血の涙を流して開城工業地区の正常化と金剛山観光の再開を訴えており、北と南の離散家族は生前の最後の恨みである血肉との面会を切に待ち焦がれている。民族の構成員なら、どうしてこんにちのこの悲劇的事態に顔をそむけることができようか」

と、事態の正常化再開を訴えているのは、あくまで韓国側だという立場を取っているが、提案された内容を見ると、北朝鮮から韓国側に歩み寄っていることは明らかだ。

   声明では、両地区についての南北当局者間による会談を提案。「離散家族・親せきの面会をはじめ人道問題」についても話し合うことも可能だとした。会談の時間と場所についても「南側が便利であるように定めればいいであろう」と韓国に委ねた。

南北の共同イベント開催も呼びかける

   そもそも北朝鮮は、韓国側からの開城工業団地再開の協議の呼びかけを拒否し続けてきた。この方針を180度方針転換した形だ。

   金剛山については、中国人をはじめとする外国人観光客が訪れる様子を朝鮮中央通信が伝えるなどして景勝地ぶりをアピールしてきた。だが、韓国との事業については、12年12月3日配信の記事で、事業が中止になるきっかけになった観光客の射殺事件を「『挑発』だの、何のとして一大対決狂乱劇を演じた」と非難したのが最後だとみられ、ほとんど忘れ去られたに近い状態だった。

   声明では、開城・金剛山以外についても、「南朝鮮の民間団体の往来と接触、協力事業の扉を開け放っている」とアピールしてみせた。

   さらに、2000年に金大中大統領(当時)が平壌で金正日総書記と会談して発表した「6・15共同宣言」13周年と、1972年に結ばれた「7・4共同声明」41周年を記念するイベントの共同開催も提案。

   声明は、このような直接的な強いメッセージで結ばれている。

「南朝鮮当局が心から信頼構築と北南関係の改善を願うなら、今回の機会を逃がしてはならず、(韓国側が北朝鮮に抱いている)不要な被害妄想症にとらわれた憶測と疑心を捨ててわれわれの大らかな勇断と誠意ある提議に積極的に応えなければならない」

金正恩第1書記の明確な指示で声明は作られた?

   北朝鮮が軟化路線に転じている背景には、大きく二つの要因があるとみられている。ひとつが、外貨を獲得するチャネルを確保する必要性が高まっていることだ。5月上旬~中旬には中国の主力銀行が最大の外資決済銀行「朝鮮貿易銀行」との取引を停止したことが伝えられている。ふたつ目が、人事異動。12年10月に就任したばかりで、強硬派として知られていた金格植人民武力相(国防相)が、わずか半年で解任された。軟化路線をとろうとする金正恩氏の意向が反映されたとの見方も広がっていた。

   韓国の聯合ニュースは、文面から、さらにふたつの動きを解説している。ひとつが、声明文の

「祖国平和統一委員会は、委任によって、次のような重大立場を明らかにする」

   という箇所で、文中では明示されていない「委任」の主語に注目した。今回の声明は、金正恩第1書記の明確な指示によるものだという見立てだ。

   ふたつめが、「7・4共同声明」に言及している点。この声明が発表された1972年に両国のリーダーだったのは朴正煕大統領(同)と金日成首相(同)。朴正煕氏の娘にあたる朴槿惠大統領の反応を見極める狙いがあるとされる。

   韓国政府は北朝鮮側の提案を前向きに受け止めており、事態が大きく動く可能性が出てきた。

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