郊外住宅は20キロ圏内でないと売れない 「老後は郊外に一戸建て。のんびり畑仕事」は幻想

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   郊外にある住宅が売れなくなってきている。

   原因は、少子高齢化で便利な都心に人口が集中してきたからだ。働きやすさを求めるワークライフバランス(仕事と生活の両立)への意識が高まったことに伴う「職住接近」志向もあり、いまや通勤時間に1時間以上かかるような住まいは敬遠されているようだ。

老若男女、こぞって「都心マンション」になびく

「老後は郊外の一戸建て住宅で、のんびり畑仕事」は、もはや幻想なのか?
「老後は郊外の一戸建て住宅で、のんびり畑仕事」は、もはや幻想なのか?

   東京・湾岸エリアなどの超高層マンションの建設ラッシュが続いている。不動産経済研究所によると、2014年以降に完成予定の超高層マンション(20階建て以上)は全国で252棟、9万3000戸。このうち、首都圏は75.6%にあたる173棟、7万235戸。さらにそのうちの111棟、4万7037戸が東京23区内に建つ予定だ。

   立地や生活利便がよく、中古物件になっても値崩れが起きにくく換金性に優れている点が人気の理由とされる。

   こうしたマンションを買う人は、30~40歳代の若い世代が中心。生まれ育った地方都市や郊外の住宅地を見捨てて、いきなり東京の、しかも新宿区や中央区、港区といった都心の一等地に居を構えるわけだ。

   一方、郊外の住宅地はさえない。みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏は、「最近は売れる物件、売れない物件がはっきりしています。2極化していて、郊外の物件は資産価値が下がるので売れなくなってきています」と指摘する。

   石澤氏によると、「売れる物件」は千代田区から20キロメートル圏内で、具体的には「東は船橋(千葉県)、北は大宮(埼玉県)あたりまでで、それを越えると売れなくなりますし、デベロッパーもつくらなくなってきています」と話す。

   郊外の住宅が売れなくなってきたことについて、石澤氏は「もはや、『老後は郊外に一戸建てを買って、のんびり畑仕事をして暮らす』というのは幻想です。ようやく、それに気づいたということでしょう」という。

   都心のマンションは、いまやリタイヤしたシルバー世代でも人気。交通の便がよく、生活に便利。優秀な医療機関に近く、また数も多い。最近のマンションはバリアフリーも整っている。多くの人が住んでいるので、行政サービスもしっかりしていることが、その理由だ。

   子育て世代にとっては、有名私立の小・中学校などが多く、受験しやすい環境にあることも大きい。独身者には、もちろん通勤時間が短いことが都心マンションの魅力なのだ。

空き家が空き家を招き、「町がなくなる」?

   郊外の住宅が売れなくなっているのは、なにも都心マンションの人気が高いからだけではない。

   哲学者で大阪芸術大学芸術学部の純丘曜彰教授は、マイナビニュースの「ただでも売れない郊外住宅」(2014年5月12日付)で、「すでに地方都市や郊外住宅地の不動産が流動性を失い始めている」と指摘している。「いくら建物が立派でも、街や村がなくなれば、住宅としての意味をなさないからだ」という。

   住宅が減っていくのを放っておくと、空き家や空き地が増えて、「住宅地」そのものが衰退してしまう。

   たとえば、かつては通勤圏内だった住宅地であっても、親世代が亡くなったり、子ども世代が都心に移住したりすることで空き家になっていく。きちんと整理・処分していってくれればいいが、所有者が不明の場合はどんなに朽ちても、壊して撤去することもできない。

   歯が抜けたような住宅地になると、町内会が組織できなくなったり、空き家に不審者が出入りしたり、ボヤが起こった家屋がそのままになっていたりと、防犯上も悪くなる。町のイメージダウンになり、さらに空き家が増える「悪循環」に陥っていく。

   そうなると、住宅は売りに出しても売れなくなる。

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