2024年 4月 30日 (火)

アベノミクス・シナリオはこれからどうなるのか 同日選・消費増税延期「決断」の時期近づく

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   安倍晋三首相の経済政策、アベノミクスに陰りが目立つ中、安倍政権の今後の政策運営はどう展開していくのか。消費税増税の延期論、衆参同日選挙論などもからめて、主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)や「ニッポン一億総活躍プラン」などの「道具立て」組み合わせたシナリオが練られている。

   しかし、ここにきて熊本を中心とする九州中部地方を大規模地震が襲うという想定外の要素が加わった。日本経済全体に対するマイナスの影響も現実味を増しつつあり、経済運営のシナリオが描きにくくなっているのも事実だ。政権にとって決断の時期は近づきつつある。

  • 消費増税を延期するか否か、首相の決断はいかに(2014年6月撮影)
    消費増税を延期するか否か、首相の決断はいかに(2014年6月撮影)
  • 消費増税を延期するか否か、首相の決断はいかに(2014年6月撮影)

7月10日投開票の選挙勝利が目標の経済運営

   今後の日程はこうだ。

   5月20~21日=G7財務相・中央銀行総裁会議
   5月26~27日=伊勢志摩サミット
   5月末=「一億総活躍プラン」、「骨太の方針」、「日本再興戦略(成長戦略)」決定
   6月1日=通常国会会期末
   6月23日=参院選公示
   7月10日=参院選投開票

   安倍首相が国会会期末に衆院解散に踏み切れば、衆院選は6月28日公示、7月10日同日選になる。

   安倍政権としての最大の目標は選挙勝利。解散の有無も、参院選単独と同日選のどちらが有利かの一点で判断するわけだが、「安倍首相としては、基本的に同日選に勝って長期政権を確かなものにし、あわよくば憲法改正まで持ち込みたいのが本音」(全国紙政治部デスク)との見方が強い。そして、選挙をにらみつつ、2017年4月に消費税率を予定通り10%に引き上げるか、延期するかを判断することになる。

   そこで、まず必要なのが、足元の景気下支えだ。金融の異次元緩和による円安で輸出企業を中心に企業収益を改善させ、株価を上げるというアベノミクスの好循環が政権の生命線だが、円高に反転し、企業収益も頭を打ち、賃上げも限定的といった現在進行中の「陰」を放置できないのは当然だ。

   2016年度予算成立を受け、安倍首相は4月5日の閣議で予算の前倒し執行を指示。具体的には、公共事業など12.1兆円のうち、約8割に相当する10兆円規模について、9月末までの半年間に前倒しで契約を済ませることを目指す。例年は年度前半で7割弱だから、8割なら上期に1兆円規模で公共工事が上積みされたのと同じ効果が期待できるというわけだ。

   日銀が追加緩和に動く可能性もある。5月は金融政策決定会合がなく、6月になれば選挙が迫るので、4月27、28日の決定会合が選挙前の事実上のラストチャンスになる。

サミット控え「財政出動」に傾く

   こうした「応急手当」は、財政出動、すなわち補正予算と一体になっている。本予算の執行を前倒しすれば年度後半に息切れするのだから、当然、補正予算で埋め合わせることになる。選挙にらみで仕掛けていた「一億総活躍プラン」のなかで、公共事業の積み増しのほか、待機児童問題への対応を含む子ども・子育て支援や、額面より多い買い物ができる「プレミアム商品券」の発行による個人消費の喚起などが検討されている。熊本の地震への対応も、当然、盛り込まれることになる。

   伊勢志摩サミットは、国際的な一大政治ショーで、議長国として「日本のリーダーシップ」を発揮する絶好の機会であり、選挙へ向けたアピールの場として最大限活用する戦略になる。議長として「率先して財政出動策を示す」と、政府筋は意気込む。

   安倍政権は、経済政策の参考にするためとして「国際金融経済分析会合」を開いてきたが、3月22日に招かれた会合で、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大教授に、安倍首相自ら、ドイツに財政出動での協調を説得するためのアイデアを質問していたことが、後にクルーグマン教授自身のネット上で公開した議事録で明らかになっている(政府はオフレコとして内容を公表していなかった)。ドイツは財政余力があり、経常黒字国だが、財政規律を重視する立場から財政出動には否定的といわれる。「安倍首相はメルケル独首相と信頼関係を築いているから、協力を引き出せる可能性がある」(国際経済筋)との声もあり、これから1カ月、どう詰めていくかも、大きな注目点だ。

熊本地震、そして衆院補選結果が重大な影響を

   そして、最終的な分かれ道が消費税。税率アップを予定通り実施するか、否か。「国際金融経済分析会合」は、これを判断する舞台回しの一つとされ、クルーグマン教授ら「権威」に「増税延期」を語らせて世論を誘導し、延期決断、衆院解散・同日選に持ち込む――とのシナリオが春先には語られ、同日選を確実視する見方が増えていた。しかし、ここにきて、円高・株安の進展もあり、そうした見方はやや後退しているようだ。

   首相には(1)増税実施・解散回避、(2)増税実施・解散断行、(3)増税延期・解散回避、(4)増税延期・解散断行の4通りの選択肢がある。「(増税再延期は)信頼性の問題も出てくる」(4月13日、経済協力開発機構=OECDのグリア事務総長)など、財政再建後退への懸念は国際的にも強い。安倍首相は「重大な事態が発生しない限り予定通り(税率を)引き上げる」とする一方、「その時の政治判断」とも述べ、決断へフリーハンドを確保しながら、状況を見定める構えだ。

   ただし、熊本の地震は想定外の要素。自動車の部品供給に支障が出て完成車工場の生産ラインが止まるなど、景気への悪影響が懸念され始め、ただでさえふらつく足元の景気、株価の動向は、一段と不透明感を増している。そして目先では、与野党一騎打ちの衆院北海道5区補選(24日投開票)の結果が解散戦略に大きな影響を与えるのは間違いない。首相の決断の時が近づいている。

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