2024年 4月 26日 (金)

日本式「横並び予算カット」で夢は生まれるか

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   不況の中、企業は様々な経費の削減に血道をあげているようだ。某企業の営業マンなどは、会社支給の携帯電話の使用が制限されたらしい。要するに、自分の携帯電話を自腹で使えという暗黙のプレッシャーである。

   同様の話は枚挙に暇が無い。交際費全額カットやタクシー使用禁止はまだかわいい方で、ご丁寧に取引先を電車で返す際の応対マニュアルまで作っている商社もある。

   あわせて、日本企業の伝統である横一律の予算カットも健在だ。大赤字の部門も増収増益中の成長部門も、一律で予算カット。「うちは儲かっているじゃないか」とか「万年赤字です」なんて関係ない。

   もちろん従業員も横並びで、3倍働いている働き者も、これといって仕事をしていない人間も、仲良く一律でボーナスカット、昇給据え置きされることになる。日本企業は運命共同体なので、こういう発想になるのは、それはそれで合理的である。

   ただ、それで十分かと言われると、正直いって疑問は残る。今回の不況を乗り切り、さらには中国やインドと競争しつつ、新たな成長を遂げられるのだろうか。

「一律○○%カット」だけなら経営者はいらない

   たとえば、ある会社が展望の無い部門をリストラして、需要の見込める原発部門に経営資源を集中すれば、少なくとも「原発事業で世界一」という"夢"は見ることができる。GEのように「世界シェア3位以下の事業は切り捨てろ」とは言わないが、営業マンに自腹で通話させるような会社で、なにか明るい夢が見られるのだろうか?

   何が必要で何が不要か。それを判断してリソースを配分するのが本来の経営者であるはずだ。「一律○○%カットしますね」という書類にはんこを押すだけなら、お猿さんにでもやらせた方が餌代だけで安く済む。

   現在、予測を超える日本経済の落ち込みに際して、電機など一部大手企業に対する公的資金の投入が議論されている。僕自身は必ずしも反対ではないが、「それぞれの企業がそれぞれの夢を描いて見せられること」は最低限必要な条件として課すべきだろう。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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