2024年 4月 27日 (土)

日々のストレスを増大させる「漠然とした不安」

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   将来に対する不安を感じていると、日々のストレスの感じ方が強くなります。ストレスを軽減するためには、「漠然とした不安」の源を直視し、解消に向けて実際に行動してみるスタンスが有効でしょう。

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定年退職者への調査でわかった「不安の変化」

不安は環境に適応するための準備
不安は環境に適応するための準備

   新しいプロジェクトへの参加や、部署の異動・転勤など、日常生活の変化を余儀なくされるできごとは、ビジネスパーソンにはつきものです。変化には、人によって強さは異なるものの、誰もが不安を感じます。

   不安は新たな環境に適応するための準備のひとつですから、この感情はわれわれには必要なものです。ただし、それが強くなりすぎるとストレスとなり、健康を害することにもつながってしまいます。

   不安のあまり、新しい生活に踏み出すことを躊躇して、将来へのチャンスを逃してしまうこともあるでしょう。

   しかし、「案ずるより産むが易し」ということわざもあるように、実際にやってみれば考えていたほどのことが起こらず、不安を感じすぎることもなかったと振り返ることも少なくありません。

   一例として、われわれが行った地方公務員の調査結果をご紹介しましょう。定年退職を控えた労働者に対し、「定年退職後の生活状況」と「精神的健康」との関連を検討したものです。調査対象者を、

A.退職後、経済的な問題がなくても再就職をする
B.退職後、経済的な問題があるため再就職する(経済的問題がなければ就労したくない)
C.退職後、再就職しない

に分けて健康度を比較したところ、退職前の調査で抑うつ度が高かったのはB群とC群でした。お金の心配がなく、これまで通りの生活を続けることのできるA群は、抑うつ度が高くなかったのは当然といえます。

   ところが、実際に定年退職を迎えた3カ月後の調査では、変化が起こりました。B群とC群の抑うつ度は、A群と同程度まで回復していたのです。

準備に「完璧さ」を求めすぎないこと

   B群の人たちは、退職前は将来に対し「本当は好きなことをしたいけれど、お金のために働かなければいけない」という消極的な考えを抱いていたのではないでしょうか。

   また、何十年も通い続けた職場を離れるC群の人たちにも、変化に対する不安があったのでしょう。

   しかし、実際に定年退職を迎えると、徐々に新たな生活にも慣れて不安も軽減したため、A群と同じ程度に精神的健康が改善したものと思われます。

   「不安」とは医学用語で、「対象のない漠然とした落ち着かない気分」と定義されています。つまり対象を明らかにし、それを解消する行動を着実に起こしていければ和らぐのです。強い不安がおそった時には、次のような対処法が有効です。


1.何が心配なのかをはっきりさせる

   「不安」は漠然としたものですが、その対象がはっきりすると「心配」に変わります。何が心配なのか内容をはっきりさせることで、気持ちが少し落ち着きます。

2.見通しを立て、準備をする

   期限を定め、心配を解消するために何から着手すればよいのか考え、実行の「準備」をします。ポイントは、準備に完璧さを求めすぎないことです。

   完璧主義は、うつ病になりやすい性格の代表です。不安を強く感じているときは、エネルギーを消耗していることが多いので、まずは最低限しなければいけないことを意識し、余力があれば仕上げを行うという感覚でいるのがよいでしょう。

3.あとはどうあれ、やってみる!

   準備をしても、不安が取れないこともあるかもしれません。そんな時は、無理に不安を消そうとしても、かえって強くなったり、焦りにつながったりします。不安を抱えている自分を認めながら、思い切って行動してみましょう。


   もともと不安というのは、大げさにセットされていることが多いもの。いくら心配しても想定外のことも起こりうると考え、臨機応変に対応できる余裕を残しておくことに意識を移すのもよいかもしれません。


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今回の筆者:宇佐見 和哉(うさみ・かずや) 精神科医(医学博士)。桜台江仁会病院精神科勤務。産業精神医学、ワークライフバランスが研究テーマ。臨床活動に加え東京都知事部局において精神科産業医業務を統括するなど、広く労働者のメンタルへルスケアに従事している。東京都内の事業場で産業医としても勤務。

筑波大学大学院・松崎一葉研究室
高度知的産業に従事する労働者のメンタルヘルスに関する研究を行い、その成果を広く社会還元することを目指している。正式名称は筑波大学大学院人間総合科学研究科 産業精神医学・宇宙医学グループ。グループ長は松崎一葉教授(写真)。患者さんを治療する臨床医学的な視点だけではなく、未然に予防する方策を社会に提案し続けている。特種な過酷条件下で働く宇宙飛行士の精神心理面での支援も行っている。松崎教授の近著に『会社で心を病むということ』(東洋経済新報社)、『もし部下がうつになったら』(ディスカバー携書)。
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