「自社に悪い話をマスコミに出すのはバカだ」 そんな「勘違い」経営者に言いたいこと

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   広報は、一般社会と良好な関係を構築し、維持していくための活動であり、パブリック・リレーションズ(Public Relations)活動と呼ばれる。頭文字を取るとPRのため、広告・宣伝と勘違いされることも多いが、広報と広告・宣伝は180度異なる。

   広報は、マスコミに情報を紹介して取材してもらい、報道および記事掲載につなげていくことで、社会への情報伝達を図ろうとする活動であり、マスコミへの費用を要しない。一方、広告はマスコミにお金を払って宣伝する。ところが、中堅・中小企業の経営者は、株式上場会社のトップを含め、その違いを分かっていないケースが非常に多い。そこで、間に立つ広報マンも苦労している。

プレスリリース作成段階で好ましくない2つの傾向

   この最たる例は不祥事だろう。社会に迷惑を及ぼすようなシステム障害、顧客名簿の漏えい、コンプライアンス(法令順守)違反、商品への異物混入、サービス残業の恒常化、従業員の不当解雇などがあった場合、株式非上場の中堅・中小企業経営者はこれらの情報をマスコミに流そうとしないケースがほとんどといっていい。株式上場の中堅・中小企業経営者でも、証券取引所の開示ルールから外れていれば、情報を積極的に流そうとはしない。一般社会と良好な関係を構築し、維持していくのが広報活動と理解していれば、社会や顧客に迷惑をかける出来事は情報開示しなければならない。むしろ、早めの情報開示により社会的被害を最小限に食い止めなければならないが、経営への影響を気にするあまり、対応が後手に回ってしまう。かつて「(自社にとって都合の)悪い話を(マスコミに)出すのはバカだ。出すのは良い話だけ」と公言する経営者がいた。広報は宣伝・広告ではなく、パブリック・リレーションズと正しく理解していれば、このような発言は出ないのだが…。

   もう1つの例はプレスリリースだ。活字メディアの発行部数が漸減し、記者の数が減少傾向にある中で、プレスリリースの重要性が増している。しかし、中堅・中小企業とお付き合いをしていると、リリース作成段階で好ましくない傾向が2つある。1つは、広告・宣伝とはき違えて、あれもこれも盛り込み、なおかつオーバーな表現になってしまうこと。もう1つは、業界・専門用語をそのまま使用して、それに何ら疑問を持たないことだ。

オーバーな表現をすればするほど、ニュース価値に疑問を持たれてしまう

   プレスリリースの書き方は、ニュース部分を簡潔に、5W1Hを明確にしながらまとめるのが正しい。行数はA4用紙1枚でまとめるのが理想とされる。あれもこれも盛り込むと、A4で3枚程度になり、ニュースポイントが著しくぼやけてしまう。さらに、記者が求めるのは客観的な事実なので、オーバーな表現をすればするほど、ニュース価値に疑問を持たれてしまう。また、記者は中高生レベルで理解できる記事を志向しているため、業界・専門用語は平易に"翻訳"しなければならない。この"翻訳"段階でミスが発生しやすいため、プレスリリースは最初から業界・専門用語を多くの人が理解できる表現に変えておくのが理想である。

   プレスリリースは広告・宣伝ではない。記事として採用してもらうために、ニュース価値を分かりやすく訴求しなければならない。そこでも大事なことは、社会と向き合い、社会への影響度という観点でまとめられているかどうかである。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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