2024年 4月 27日 (土)

「業務委託」契約で「時間外」続き 「残業代出ない」は本当ですか?

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   だんだん寒くなってきて今年も残りわずかとなってきました。年始に向けて、いろいろ片付けをし始めました。そして、この時期、年末に向けてしなくてはならないのが、年末調整。前回は千葉先生にマイナンバーのご説明をしていただきましたが、今年の年末調整からは個人番号の記入欄が新設されましたね。

   会社員だと、年末調整を担当の部署の方がやってくれるので比較的簡単なのですが、確定申告をしないといけない個人事業主の方は大変ですよね。今回は、個人事業主として業務委託で働いている方々に関する解説をしていきます。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

「8時間拘束」のはずが・・・

また残業でした・・・
また残業でした・・・

   私は現在、個人事業主のシステムエンジニアとして働いており、業務委託の契約で、あるIT企業のプロジェクトに参加しています。契約内容は、平日は会社へ出勤し、休憩1時間の8時間拘束で、新規立ち上げ事業のシステムを組み立てていくというものです。しかしながら、プロジェクトをしあげるスケジュールが、明らかに厳しく、残業を余儀なくされています。その旨をチームのリーダーに報告したところ、「業務委託なので残業代は出ない」ときっぱり言われてしまいました。

   こういった場合、業務の為に残業をしているのに、残業代は払われないのでしょうか。また、残業代が払われないのであれば、契約を解除することはできるのでしょうか。(実際の事例を一部変更しています)

弁護士解説 形式的には、労働法の適用はない

   (企業と個人の契約の場合)業務委託とは、労働者として、企業に勤める働き方ではなく、企業と契約を結んで、仕事をするという働き方です。つまり、個人が、個人事業主として、企業と対等の立場で契約をして、企業から頼まれた仕事をするという働き方を言います。

   実質的に業務委託で契約を結ぶと、企業とは独立した個人として、仕事をすることになります。このため、形式的には、労働法の適用はないことになります。したがって、ご相談されている残業代の請求はもちろん、一方的に企業との契約(業務委託契約)を解消することもできなくなると考えられます。

   また、そのほかの問題点もあります。業務委託は、企業から独立した存在となるので、普通、会社員として会社に雇用されると労働保険・社会保険に加入することになりますが、業務委託の場合は対象外です。したがって、業務災害の場合も個人の自己負担となります。その他、労働者であれば当然認められる権利(たとえば自由に退職して仕事を辞める、労働者であれば解雇が簡単にはされない)が認められません。

   では、業務委託という形式で契約を結ぶと、常に労働基準法の適用がないのでしょうか。

   労働基準法9条は、「『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業または事業所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義されています。

   そして、「労働者」に該当するかどうかは、雇用契約、請負契約といった契約の形式にかかわらず、実質的な働き方をみて判断するとされています。具体的には、仕事の依頼に対する諾否の自由の有無(指示された仕事を断れるかどうか)、指揮監督の有無(自分で働き方や仕事の仕方・進め方を決めているかどうか)、勤務場所・勤務時間を拘束性の有無(どの程度時間や場所の制限があるか)などが判断要素としてあげられています。

総合的に「労働者」にあたるかが判断される

   さらに、「労働者」であることの判断を補強する要素として、機械・器具の負担関係(会社のPCやコピー機などを使っているかどうか)、報酬の額、専属性の有無(その会社の仕事をメインにしているか)、その他、給与所得として源泉徴収をしているか、労働保険・社会保険が適用されているか、退職金制度、福利厚生制度に組み込まれているかなどの要素をあげています。そして、これら要素を総合的に考慮して「労働者」にあたるかが判断されます。

   では、ご相談者さんの場合はどうでしょうか。

   平日は会社へ出勤し、休憩1時間の8時間拘束とあります。このことから、本件契約では、勤務場所や勤務時間が決められており、自由に自分で選択できない状況ですね。また、業務の内容は、新規立ち上げ事業のシステムを組み立てていくというものですが、仮にご相談者さんが、会社から相当の指揮監督を受けていたら独立した裁量はないといえます。このような事情を総合考慮しますと、「労働者」と判断される可能性があります。

   その場合、労働基準法の適用があるといえるため、残業代の請求はもちろん、労働者である以上、原則として2週間前に退職を申し入れれば退職することができます。

   会社によっては、社会保険料の負担など人件費の増大を防ぐため、実質的に雇用契約なのにもかかわらず業務委託契約という形式をとるところもあります。今回のご相談のように、業務委託契約でも「労働者」にあたるかどうか争える場合もありますので、弁護士にご相談下さいね。


ポイント2点

   ●業務委託契約(企業と個人の契約の場合)は、個人が個人営業主として、企業と対等の立場で契約を結ぶことです。なので、業務委託で契約を結ぶと、形式的には、労働法の適用はない。

   ●しかし、仕事の仕方や拘束時間など総合的に見て、企業の「労働者」として認められることがあります。認められると、残業代の請求や退職の申し入れなど労働基準法を適用できる場合があります。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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