課長ポスト断って逆にヒラ降格 介護が理由でも処分は適法か

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   あなたは仕事で「昇進」をしたいと望んでいますか? もちろん昇進は、自身の能力が評価されたということなので喜ばしいことではありますが、最近の若者は出世したがらないという話も聞かれます。給料は増えてもその分責任や仕事量も増えるので、今のままでいいという考え方です。とある調査では、実に60%近くの人が「積極的に出世を望んでいない」と答えたのです。そんな出世に消極的な時代、「会社から昇進の話があった場合、従業員は断ることはできるのか?」という疑問にお答えいたします。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

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    上に行けない理由もあって

事例=できる先輩が昇進を断って降格に、違法じゃない?

   僕は、半年前に今の部署に異動になったのですが、その時に指導係をしてくれた先輩がとても仕事のできる人で、憧れていました。しかし、指導係とはいっても先輩は役職もついておらず、僕と同じ平社員だと知って驚きました。はっきり言って、チームリーダーや課長なんかよりずっと優秀な人だからです。そこで、周りの同僚になぜ先輩が役職についていないのかと尋ねたところ、先輩がチームリーダーだった2年前に、課長への昇進の話があったのにそれを断ったため、降格処分を受けたのだというのです。先輩には介護が必要なご家族がいるらしく、課長になると残業や休日出勤が発生するため昇進はできないというのが理由でした。ちゃんとした理由があるのに、昇進を断ったからといってあんな優秀な人を降格処分にするなんて、納得いきません。これって違法な人事ではないのですか?

弁護士回答=会社側の降格処分は無効となる余地が大きい

   昇進を断ったことを理由に、逆に降格させるとは珍しいケースですね。

   会社は従業員に対し、昇進や転勤、配属部署を変えるなどのいわゆる人事異動を命じることができます。会社は、入社時の契約により原則として従業員に対し人事権を有するため、その育成や業務の効率化のために、各従業員の能力や適性に応じた職務に就かせることができる立場にあるからです。

   ただし、会社の命令であれば何でもかんでも言うことを聞かなければならないというわけではありません。当該従業員の行為態様や性質、その他の事情からみて、著しく不利益を与える不合理な命令は、人事権の範囲を超えて違法なものとなります。

   今回のケースである課長への昇進なのですが、その優秀さゆえに昇進という辞令が出たのでしょうし、一般的に給与や手当の増加等も見込めることから、不合理なものとまでは言えず、会社は適切な人事異動を命令しようとしているということになります。

   従業員は、会社の適切な命令に従わないことはできますが、適切な命令に従わないのであれば相応のペナルティは覚悟しなければなりません。

   もっとも、これらのペナルティについて、従業員は何でもかんでも甘受しなければならないというわけではありません。

   その内容が、やはり従業員の行為や性質に照らして、客観的に合理的な理由がなく、社会一般の見地からしても相当なものといえない場合には、人事権ないし懲戒権の濫用となり違法、不当なものとして無効となります。

   今回のケースでは、会社としてはそれまで育成してきた人材についての投資結果として能力に適した課長という役職を拒否されることにより、生じる損失は決して小さくないものといえます。また、社内秩序の維持の必要もあるでしょう。

   しかしながら、ご家族を介護しなければならず、残業や休日出勤を余儀なくされるなどの点から課長職に就くことのできない、やむを得ない事情があるといえます。

   また、ご家族の介護をしながらでも今までチームリーダーとしての業務に支障がなかったのならば、チームリーダーから降格させて平社員にすることは相当な扱いとはいえないでしょう。

   この点で、会社側の扱いは人事権ないし懲戒権の濫用として無効となる余地が大きいものと考えられます。

公務員にはある希望降任制度

   なお、一部の公務員には、希望降任制度という、自らの希望で役職を辞することができる制度があります。これは本人の意向を尊重し、個人の能力と意欲に応じた人事管理のためとされています。

   もっとも、民間の企業でこのような制度を採用しているところは、現在のところ、ほとんどありません。したがって、自らの意思だけで平社員に戻ることはできませんが、会社と協議をして会社が認めてくれれば平社員に戻ることはできます。

   いずれにせよ、個々人の事情があるのですから、会社が昇進を断ったことを理由に降格させるのは不適切ですね。会社には、どういう場合にどのような人事異動ができるかについてもう少し勉強してもらいたいものです。もしも先輩が降格に不満を持っているのであれば、きちんと会社に抗議すること、場合によっては頼れる専門家に相談するなどの解決策がありますので、相談者からもアドバイスしてあげてくださいね。

ポイント2点
●会社は、入社時の契約により原則として従業員に対し人事権を有するため、その育成や業務の効率化のために、各従業員の能力や適性に応じた職務に就かせることができる
●やむを得ない事情がある場合は、降格させることは相当な扱いとはいえない

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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