ミニッツ・シンキング

文化を食す!

この日、何食べる?

この日、何食べる?

第2章は、五節句と行事食がテーマ。
節句は暦の一つ、季節の節目に伝統的な行事を行う日。もっとたくさんありましたが、江戸幕府が選び、公的な行事・祝日として定めた5つが五節句なのです。
第1章でご覧いただいた「行事食」一覧にも五節句が入っていましたね。

詳細

行事食は、その意味を知るともっと楽しくなります。

閉じる

トップバッターは「七草」。今年、七草粥(がゆ)食べた?

1.食べた
2.食べていない
投票!

古来中国では正月1日から順に鶏、狗(犬)、猪(豚)、羊、牛、馬の日とし、 7日目の人の日(人日;じんじつ)に7種類の野菜のスープを食べました。これが平安時代に日本に伝わり、穀物粥と合体して宮中行事の七草粥になったといわれます。一般に定着したのは、江戸時代です。

季節の風味を味わう

正月六日に若草摘み。翌朝、その芽吹きの勢いを食べることで邪気を払い、万病を避けるといわれる七草粥。季節の風味の味わいです。
これは、正月気分にけじめをつけ、ごちそうで疲れた胃を休める生活の知恵でもあります。
七草は、青菜が少ない時期の「食べるサプリ」。どんなビタミンやミネラルが摂れるか、イラストにポインターを合わせてチェックしましょう。

セリ:
ビタミンA、B2が多く、カルシウム、鉄分、ビタミンC、食物繊維が豊富。
香りの精油成分には、発汗、保温作用があり、冷え性や風邪に効果があります。
ナズナ:
たんぱく質、ビタミンA、B1、B2、カルシウム、鉄、マンガンが豊富。
血圧を下げるといわれるアセチルコリンやカリウムイオンも。
ゴギョウ:
たんぱく質、ミネラルに富む。扁桃炎や胃炎をしずめ、
去痰作用があるといわれるヒトステロール、
ルテオリングリコシド、カリ塩も。
ハコベ:
たんぱく質、カルシウム、鉄を多く含む。
生葉の葉緑素は口臭予防にすぐれ、
古くは歯磨き粉として利用されていた。
ホトケノザ:
健胃・整腸効果があり、高血圧を予防すると言われる。
スズナ:
根には消化酵素のジアスターゼが多く、食物繊維も豊富。
葉はビタミンA、C、カルシウム、鉄分等のミネラルを多く含む。
スズシロ:
葉にはビタミンC、カロテン、ビタミンB1、B2、リン、鉄分が、
根にはでんぷん分解酵素のジアスターゼ、たんぱく質分解酵素アミラーゼ、
エステラーゼを含む。食物繊維も多い。

次は「ひな祭り」。菱(ひし)餅のルーツは?

1.ブラジル
2.インド
3.韓国
答える

正解は2.インドです。
ひな祭りに飾る菱餅は、水辺に育つ菱の実を模したもの。上から赤(菱の実)、白(クチナシの実)、緑(よもぎ)の餅が伝統的。ルーツはインド仏典です。
☞ もっと詳しく

昔々、インドのある村。河底に住む竜が度々洪水を起こし、その怒りを鎮めるために、
女の子が生贄(いけにえ)として捧げられていました。ある年、竜の使いで生贄を捜しに来た天狗は、
かわいい娘を見つけます。でもその子は、既に7人の子どもを竜にささげた農夫の末娘。
農夫は「せめてこの娘はお助けを」と、身代りに菱の実を差し出します。
栄養価の高い菱の実は仙人の長寿食。竜も満足したらしく、その後洪水はおさまったそうです。
正解
不正解

力をつける 春のごちそう

春の農繁期が目前のこの時期。労働に耐える体力を蓄えるため、とっておきの米と、海のものや山のものを使ったごちそうの行事食が生まれます。ひな祭りのごちそうは、華やかさが魅力。

ちらし寿司
蛤の吸い物
・ひなあられ
・白酒
・菱餅

米の糖質、卵とエビのたんぱく質と脂質、野菜のビタミン・ミネラル・食物繊維などが含まれ、酢には防腐作用のほかカルシウムの吸収を高め、疲れを取り、食欲を進める効果があります。
貝殻のペアは、他のハマグリのものとは組み合わせられないといわれます。栄養価がとても高く、鉄・カルシウム・リンや、ビタミンB群、タウリンを多く含みます。盛り付けは、1組の貝に身2つが慣わしといわれています。

端午(たんご)の節句。ちまきはもともと誰のため?

1.金太郎
2.
3.こども
答える

正解は2.鯉です。
ちまきのルーツは中国・楚の時代にさかのぼり、忠義な鯉に感謝して作られたものだといわれます。
☞ もっと詳しく

楚の懐王に重用された屈原は、仲間の嫉妬から失脚します。しかしその後も愛国心を捨てず、楚が秦に攻め込まれたときに河に身を投げました。彼のなきがらは大きな鯉がくわえ、故郷の姉のもとへとはるばる運んだそうです。 楚の人々は屈原を慕い、鯉に感謝して、命日の5月5日に米を竹筒に入れて川に投げました。後にこの供物は、竜が嫌う楝(おうち)の葉で包み、竜が恐れる五色の糸で縛ったちまきに変わります。五色の糸は、鯉のぼりの吹き流しになりました。
正解
不正解

こちらは日本生まれ

柏(かしわ)餅は日本生まれ。室町時代の末頃に食べられていたものは、中のあんが味噌。今のような柏餅になったのは、江戸時代だといわれます。
柏は新芽が出てから古い葉が落ちるので、「後継者が絶えることのない」縁起のいい木とされ、武家の好みに合いました。
柏は西日本にはほとんど自生しないので、一般に関東は柏餅、関西ではちまきを食べる、ともいわれます。

「人類最古の作物」といわれるのは次のどれ?

1.トウモロコシ
2.
3.
答える

正解は3.麦です。
氷河期の終わりの“寒の戻り”。狩猟だけでは食料を確保できず、人類は森を出ます。 そこで見つけた寒さに強い小麦。小麦の栽培は、1万5千年前頃から始まったのではないかといわれます。

当時の小麦は1粒系小麦。これが小麦と交雑して2粒コムギになり、
紀元前5500年頃に野生種のタルホ小麦と交雑して普通小麦が生まれたといわれます。
近年の研究では、小麦などの穀物よりも前に、イチジクが栽培されていた可能性もあると考えられます。
正解
不正解

七夕は畑の収穫祭

七夕は、盆に先立ち穢(けが)れを祓(はら)う行事。また畑作の収穫祭でした。麦、粟、稗(ひえ)、芋、豆を主食としていた時代に、麦の実りとキュウリやナス、ミョウガなどの成熟を神に感謝したものです。
七夕にはそうめんを食べる習慣があります。そうめんの歴史が最も古い三輪では、かつては奈良盆地でその年に収穫した良質の小麦を使って作りました。
涼やかなそうめんを織姫がつむぐ糸に見たて、裁縫の上達を願ったともいわれます。

地方により、子どもは7回水浴びをする、女性は髪を洗う、井戸をさらう、などの風習がありました。

世界を救った日本の小麦

現在、日本の小麦の自給率はカロリーベースでわずか8%。しかし歴史の中で、「日本の小麦」が世界を救った事実もあるのです。
第2次世界大戦後、小麦やジャガイモの生産が世界的に激減。そんなときアメリカが注目したのが、日本の小麦…岩手県農事試験場で稲塚権次郎が品種改良し、育てあげた農林10号です。
GHQは、丈が短く成長が早く、寒さに強くて収穫量が多い「ノーリン テン」を持ち帰ります。これがアメリカ産ゲインズ小麦の親となり、メキシコ系小麦との交配に用いられ、メキシコ、インド、パキスタン、トルコの小麦生産量を数倍増やし、世界を食糧危機から救ったのです。

農林水産省 「平成22年度の食料自給率をめぐる事情」

「もってのほか」って、どんな食材?

1.サツマイモ
2.マツタケ
3.キク
答える

正解は3.キクです。
「もってのほか」は食用菊の王様。正式名は「延命楽(えんめいらく)」。思っていたよりずっとおいしい」ことから、こんな名前になったという説があります。

正解
不正解

長寿祈願「重陽(ちょうよう)の節句」

翁(おきな)草、千代見(ちよみ)草、齢(よわい)草…長寿をもたらすと
信じられたは、平安時代このように呼ばれました。貴族は中国の故事に習い、陽(奇)数で一番大きな九が重なる日に、菊の花を浸した菊酒を飲み交わしたそうです。
この時期は秋の収穫祭。9月9日は栗の節句とも呼ばれ、農山村では栗ご飯で祝いました。このころ日本に入ってきたナスもすぐに広まり「お九日(くんち)にナスを食べると中風にかからない」ともいわれました。

菊花は、頭や目の熱をとってスッキリさせ、解毒作用や熱性の頭痛や結膜炎、
めまい、皮膚炎、風邪などに使用される生薬です。
菊茶は、中国では2000年以上前から生薬として利用されています。

「正月」あれこれ

中国 「春節」は最重要行事
モンゴル 「白い月」の羊のおせち
ベトナム 家族の絆深める「テト」
スリランカ 正月は占星術で決める
ロシア クレムリンの鐘で乾杯
イスラエル 9~10月の新月が新年
イタリア 正月は友人と過ごす
ペルー 大晦日から賑やかに

五節句と行事食の成立、少しわかりましたか。
次の章に進む前に、海外の正月と行事食を少しばかりピックアップ!
※ 国名にポインターを合わせると「ひとこと解説」が表示されます。行事食は一例で、地方により異なります。

旧暦正月。3週間前から腸詰、肉や魚の漬物・干物、中国式の餅を準備。
北方では餃子や餅の雑煮「年夜飯」を食べ、一家で年越し。
「白い月」は時輪暦の正月。大掃除をし,自家製の羊肉や乳、
小麦粉を使ったおせちを作って迎えます。飲み物は乳茶や乳酒。
旧暦正月。桃や梅の花を飾り、マンゴーを供えて富裕を願う。
野菜やハスの実などを乾燥させ甘くした菓子を食べ、獅子舞を見る。
正月はまず、部屋の真ん中で鍋にミルクを沸かす。ミルクは豊かさの象徴で、
それが部屋に吹きこぼれる事でその年の繁栄を祈る。
大晦日の鐘が鳴り終わるまでに、シャンパンを飲みほす。
正月はウォッカを飲みペリメニ(餃子)を食べる。ペリメニは戸外で冷凍保存。
午前中に祈り、門に常緑樹を飾る。マツォ(鏡餅のようなパン)を重ねて飾り、
後で食べる。正月の後半には、七草のような苦菜を食べる。
元日はザンポーネ(豚足の詰め物)とレンズ豆の煮物。
小さな平豆をお金に見立て、「今年も儲かりますように」と祈りながら食べる。
賑やかに酒を飲み、鳥の炊き込み飯を食べて年を越す。
正月にテーブルの下でブドウを12粒食べると良い年になる、という言い伝えも。
この日、何食べる? |
もどる すすむ 前へ 次へ
Copyright (c) Kamakura Women's University. × J-CAST. Inc. 2011. All rights reserved.