ミニッツ・シンキング

スパルタ教育本家

スパルタ流義務教育

楽しみにしていた集団生活は

集団生活のことは、村の長老から聞いていた。運動競技ダンス読み書きを習うというから、ちょっと楽しみにしていたのだ。
しかし、入ってみると、厳しい。まず、僕らは運動する時いつも裸足でいなければならない。機敏に動くためだ。
今は、春~秋は1枚の服で過ごしているが、12歳になると頭を剃られ、年間を通して下着なし、冬でも服は1枚きりで過ごさなければならない。

要領よく盗め!?

食糧事情はというと…量が少ない。しかし「足りなければ自力で調達しろ」と言われる。
自力で調達とは、誰かの食べ物をすばやく力ずくでいただくことだ。要領よく盗むのが僕らの課題。だから腹を空かせたら、他のグループの食堂や、奴隷たちのところに忍び込む。入られる方も、黙って盗られるわけではないから、命がけのこともある…これは軍事訓練の一環でもある。捕まると鞭打ちだ。戦闘において、失敗は許されないからだ。逆に、うまく盗めば褒められる。
かつて僕らの仲間が、市場でキツネの子を盗んだらしい。そいつは捕まりそうになると、暴れるキツネを服の下に隠した。そしてはらわたを食いちぎられても、しらをきり通して死んだという。
苦痛は我慢する。命に代えても隠すべきことは隠す。それがスパルタだ。

量を少なくしていたのは、真偽は別として、当時次のように考えられていたためです。
 ・戦闘時も、欠食のまま働き続けることができる
 ・同量の食事でより長時間持ちこたえられる
 ・より健康に過ごせる
 ・容易に背丈が伸びる

黄色い声にも鍛えられ

運動競技は、男女とも裸で行う。
女子は集団生活をしないが、身体を鍛えなければならないのは同じだ。種目は競走、格闘技、円盤投げ、槍投げなど。僕らと並んで行進するし、歌ったり、踊ったりする。このごろ、これが、あまりうれしくない。
女子は僕らを見て、できる奴には「賞賛の歌」を歌い、褒めそやす。だが失敗すると、長老たちの前でも遠慮なくからかい、あざ笑う。こうして僕らは、“打たれ強く”なるのだろうか…

量を少なくしていたのは、真偽は別として、当時次のように考えられていたためです。
 ・戦闘時も、欠食のまま働き続けることができる
 ・同量の食事でより長時間持ちこたえられる
 ・より健康に過ごせる
 ・容易に背丈が伸びる

歌う密集戦隊

ここで暮らして2年が経った。明日は合唱大会だ。
スパルタは合唱も盛んで、祭りのときには年齢別歌合戦でおおいに盛り上がる。仲間と頑張った成果を、ぜひ皆さんにも聴かせたいものだ。
近い将来、戦場に出るときも、僕らは歌うだろう。歌って高揚するのだ。仲間と心を合わせ、笛の伴奏のリズムに合わせ、隙間を空けず、隊列を乱さず、危険に向かって前進していく。
スパルタの武器は、この連帯感かもしれない。

おとなたちの宴会で学ぶこと

子どもたちは、おとなたちの宴会に同席しました。
宴会では美しい行いをした者が皆の話題となり、おとなたちの政治談議を聴き、年配者と接することで謙虚さを身につける機会がありました。
そこでは時々、奴隷が酒を飲まされます。これは決して奴隷をねぎらうためではありません。酔った醜態を子どもや若者に見せ、「酒を飲むのは良いが、酒に飲まれるな」と教えるための、反面教師としたのでした。
宴会からの帰路は暗闇ですが、灯火を持つことは禁じられていました。これは、夜間も活動できる兵士を育てるためだったといわれます。

スパルタ兄弟仁義

俺はリュサンドロス。アリストデモスの10歳年上だ。
彼には兄貴分として、いろいろアドバイスをしている。夕食後は、哲学問答の時間だ。
「立派な男は誰か?」「不名誉な男は誰か?」などと質問し、答えたらすぐに理由を尋ねる。簡潔にテキパキ答えろと言ってあるので、あいつも必死だ。もし彼がみっともないことをしたら、それは俺の責任、俺の不名誉に違いない。
がんばれよ、アリストデモス!

スパルタ流義務教育 |
もどる すすむ 前へ 次へ
Copyright (c) Kamakura Women's University. × J-CAST. Inc. 2011. All rights reserved.