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「若手の育成ができない」管理職を育成した会社の責任

   行政の委託業務で大阪の中小企業を17社、人材育成のコンサルティングを行うことになり、今(2014)年の9月から10月にかけて1回目の訪問をしてきました。内容は、若手社員の定着支援です。企業によって実状は異なるため、初回はヒアリングをしています。私はそのうちの6社訪問し、他のメンバーと情報共有したところ、いろいろなことが出てきました。企業の担当者から

「若手社員がおとなしいのでもっと活発になってくれればいいんですけどね」

という意見がある一方で、意外と多かったのが

「若手社員ではなく、管理職に問題があるからそっちを何とかして下さい」

ということでした。全体の6割くらいがこの話だったと思います。

「管理職が管理職の仕事をやっていない」

1回の研修だけでは・・・
1回の研修だけでは・・・

   ある程度このような話が出てくる想定はしていましたが、今回の内容は若手社員が対象だったので、こちらの方をどうするかということを考えていました。

   行政側も若手社員を定着させるには、若手社員をどうするかということにフォーカスしていたのではないかと思います。

   単純に

若手社員の離職率が高い = 若手社員に問題がある

ということではなく、もっと構造的に根深いものです。

「管理職が管理職の仕事をやっていない」

と先方から言われることが多かったのですが、これは管理職だけが悪いのではありません。

   よくよく話を聞いてみると、会社では管理職の育成をやってこなかったのです。

   だから本人達も何をやればいいのか分からないので部下のマネジメントはできていない、という状況になっています。

   その結果として、有力な若手人材が会社に見切りをつけて辞めてしまったというケースがありました。そして、こういうことが管理職のせいにされてしまうわけですが、全て管理職が悪いというわけではないと思います。管理職になったら自覚を持って、自分でどうしたら良いかを考えて行動していかなければならないとは思いますが、会社としても何かしらの支援をしないのはどうかと思います。

   やり方も分からずにやっていって、それで悪者になってしまうのですから、管理職もある意味、被害者なのかもしれません。

「管理職セミナーに行かせたりはしていますが、なかなか効果が出ない」

   確かに、個人レベルで問題のある若手社員や管理職はいます。

   世の中的にも若手社員が悪い、管理職が悪いという各論で書籍もありますが、深く掘り下げていくと家庭、学校教育といった社会的な問題にまで展開されるのではないかと思います。

   今回のように若手社員の定着率といったテーマであっても、本質的な問題や課題を把握せずに単純に

若手社員が問題だから若手社員の研修をやりましょう!

では解決にならないのは言うまでもありません。

   なかなか中小企業でしっかりと管理職の育成を行っているところは少ない、というのが現状です。会社から管理職に任命されて、どうすればいいのか分からずに、今までの延長で仕事をしている人も多いと思います。

   実は、会社としても何をやればいいのか分からないということがあります。

   「管理職セミナーに行かせたりはしていますが、なかなか効果が出ない」と悩んでいる経営者、人事担当は意外と多いです。

   1回、外部のセミナーに行かせたくらいで管理職の意識を持てるようになるほど甘いものではありません。

思いの吐き出しの場を設けることも必要

   私は、まずは「管理職の役割は何か?」を伝えることが大事だと考えています。

   そもそも論になりますが、意外とここをしっかり伝えていないのではないでしょうか。

   管理職は「会社の方針を理解し、部下に伝え、部下を育成していく」ということが重要な役割だと思います。その中で

部下を育成するにあたって、管理職は具体的に何をすればいいか?

ということを自社の実状と個々の状況に応じて考えることが大事です。

   その前に、管理職が何に困っているのかということを知る必要があるので、思いの吐き出しの場を設けることも必要かと思います。

俺の部下が言うこと聞かなくてさー
何やればいいのか全く分からないよ

   こんなことからでも良いと思います。

   「その悩みを解決するためにこれからやっていこう」という風に進めていった方が良いでしょう。管理職の言い分もあるわけで、それを聞いて悩みを共有することが大事だと思います。

   管理職の育成はすぐにできるものではありませんが、部下の育成ができる管理職が育ってくれば、部下の育成もでき、組織力が強くなります。

   若手社員の定着化、即戦力化は会社に部下育成ができる管理職が何人いるかにかかっているといっても過言ではありません。(野崎大輔)