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ルネサス火災でどうなる自動車! 関係者ヤキモキ、減産規模は165万台に?

   半導体大手のルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で火災が発生し、生産再開には早くても1か月程度、出荷量が以前の水準に戻るには3~4か月かかるかかる見通しになった。

   この工場で作られる製品の大半は世界的に不足する自動車向けの半導体で、自動車業界ではさらなる減産が避けられない状況。日本の自動車産業、ひいては日本経済のアキレス腱が露呈した。

  • ルネサスエレクトロニクスの工場火災で自動車は減産を避けられず……(写真はイメージ)
    ルネサスエレクトロニクスの工場火災で自動車は減産を避けられず……(写真はイメージ)
  • ルネサスエレクトロニクスの工場火災で自動車は減産を避けられず……(写真はイメージ)

自動車産業の半導体不足に追い討ち

   火災は、那珂工場の生産ラインが入る棟の1階で3月19日午前2時47分に発生し、約5時間半後に鎮火した。配線装置に過電流が発生して出火したとみられ、半導体を製造する際に不純物を入れないようにするクリーンルームの一部も焼けた。

   ルネサスは、この火事で半導体製造装置11台(生産棟内の全装置の2%)が被害を受けた、と当初は発表したが、その後の調査で23台に増えた。

   生産再開・回復の見通しについて、ルネサスは31日の記者会見で、生産再開に1か月、出荷再開に2か月、出荷が火災前の水準に回復するのに3~4か月――と説明した。

   半導体は製造工程が多く、再開してすぐ出荷できるわけではない。まず、生産を再開するが、その工程が終わって完成・出荷に至るのはまだ時間がかかる。そこで、火災前に途中まで作っていた「仕掛かり品」を先に仕上げることになる。

   その出荷が2か月後の5月以降となる。生産再開分の出荷は当初は少量にとどまり、全体が軌道に乗って通常に戻るのは6~7月ということになる。

   被害を受けた製造装置23台に代わる装置の導入も急ぐ。11台は4月末までに、7台は5~6月に導入を見込むが、5台は見通しが立っていないといい、生産の回復がさらに遅れる可能性もある。

   ルネサスの那珂工場の製品の3分の2は自動車向けといわれ、今回の生産停止の影響は自動車業界に集中している。

   ただでさえ自動車業界が半導体不足にあえいでいることは、J-CASTニュース(「効率追い求めた生産スタイルが仇に 半導体不足で自動車メーカーが打撃を受ける理由」2021年2月1日付)でも報じたが、その後も、米テキサス州の大寒波で、世界大手の一角を占めるオランダNXPセミコンダクターズと独インフィニオンテクノロジーズなどの生産が止まるなど、不足が深刻化していた。ルネサスの火事は、さらに追い討ちをかけるものだ。

半導体、5Gや「巣ごもり」需要で自動車に回らず?

   おさらいしておくと、半導体は電子部品の制御などに幅広く使われているが、自動車はいまや半導体の塊ともいわれ、カウントの仕方にもよるが、1台で50~80個、高級車では100個以上の半導体が組み込まれているといわれる。これが不足すれば、たちまち生産は滞ってしまう。

   2020年前半、新型コロナウイルスの感染拡大で自動車の生産が落ち込む一方、「テレワーク」や「巣ごもり」でパソコン、ゲーム機、そして通信業界の5G関連機器などは生産が活発で、半導体も自動車のマイナス分がそっちにシフト。年後半に自動車生産が急回復し時には、半導体の供給が追い付かなくなったのだ。

   今回の火災を受け、各自動車メーカーは半導体確保に奔走している。概ね、各社が確保している在庫は多くて3か月分、なかには1か月分程度しかない部品もあるという。各社、生産計画の見直しを進めているが、一定の減産は避けられない見通し。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は2021年度上半期(4~9月)の国内メーカーの減産規模(海外を含む)が全体の約12%に当たる計165万台にのぼると試算しており、影響がどこまで広がるか、関係者のヤキモキは続く。(ジャーナリスト 済田経夫)