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大阪で猛威!変異ウイルスが東京を襲う 3度目の緊急事態宣言が東京五輪を中止に追い込む?(1)

   新型コロナウイルス感染症の急拡大を防ぐため、「まん延防止等重点措置」の運用が2021年4月5日から大阪府、兵庫県、宮城県で始まった。大型連休が終わる5月5日までの31日間続く。

   3府県の対象地域で、飲食店などに20時までの営業時間の短縮を要請する。

   変異ウイルスの猛威が広がっており、首都圏にも飛び火するのは避けられそうにない。首都圏の場合は、「まん延防止等重点措置」などいう中途半端な対策ではなく、3度目の緊急事態宣言がちょうど東京五輪開催と重なりそうだという。東京五輪は開けるのか。

  • 東京都に3度目の緊急事態宣言が発令されるか(写真は東京五輪組織委員会の公式サイトより)
    東京都に3度目の緊急事態宣言が発令されるか(写真は東京五輪組織委員会の公式サイトより)
  • 東京都に3度目の緊急事態宣言が発令されるか(写真は東京五輪組織委員会の公式サイトより)

大阪知事VS神戸市長「マスク会食」バトルの勝敗は

「マスク会食義務化」を訴えた吉村洋文・大阪府知事
「マスク会食義務化」を訴えた吉村洋文・大阪府知事

   吉村洋文・大阪府知事は、特に「マスク会食の義務化を徹底したい」と強調した。大阪市内の飲食店は、(1)20時までの時短営業(2)アクリル板の設置(3)マスクをしない客の入店拒否(4)マスク会食をしないお客の退出が義務づけられる。このため、吉村知事は大阪府と大阪市の職員40~50人で「見回り隊」を結成。大阪市内の繁華街をパトロールするという。

   大阪市内の飲食店は5、6万軒もあるため、吉村知事は最終的には外注委託による数百人規模の「見回り隊」をつくり、ローラー作戦によって違反する店やお客に注意したいと4月3日、読売テレビ局の取材で明らかにした。

   一方、宮城県と兵庫県は「マスク会食」を義務化せずに徹底を呼びかける。4月5日から宮城県は仙台市に、兵庫県は神戸市、芦屋市、西宮市、尼崎市の4市に同措置を適用、大阪府と同様、飲食店などに20時までの営業時間の短縮を要請する。

   ところで、「マスク会食」を巡っては、吉村大阪府知事と久元喜造・神戸市長との間で思わぬバトルが勃発した。日刊スポーツ(4月4日付)「吉村知事、『マスク会食』バトル 神戸市長に反論」が、こう伝える。

「吉村知事は『マスク会食』を義務化する方針だが、神戸市の久元喜造市長は『マスク会食』に反対している。食事中にマスクを着けたり外したりすると、マスクに付着したウイルスを触る可能性があるとして、『かえって危険があるということで、マスク会食を市民に求めるつもりはありません』と否定的な見解を示している」
マスク会食の推奨ポスター(内閣府公式サイトより)
マスク会食の推奨ポスター(内閣府公式サイトより)

   そこで4月4日、全国知事会のオンライン会議終了後、日刊スポーツ記者が会議に出席していた吉村知事に神戸市長の反論に対する意見を求めた。すると、吉村知事はこう答えたのだった。

「神戸市長が『ウイルスが付いているじゃないか』と言われているが、これはきりがないと吉村知事は反論した。『服にもウイルスが付いている可能性もある。(マスク会食を)やめるなら代替措置はあるのか? 僕はマスク会食がやりにくいことはわかっているが、ふだん、みなさんの行動に近い形でできませんかとお願いしていくべきだと思う』と強調した。指摘された『危険性』については、『マスクのひもを持っての上げ下げは、感染症の専門家に意見を聞いて実施している。自分が感染しないためではなく、他人に感染させないのが目的です』と訴えた」

というのだ。

   このバトル、どちらに軍配を上げるべきか。4月5日付のテレビ朝日系情報番組「モーニングショー」がこの話題を取り上げ、日本医科大学の北村義浩特任教授がズバリ判定を下した。

「明らかに大阪府知事の勝ち、神戸市長の負けです。マスク会食の義務化に賛成です。マスクについたウイルスに触って感染するよりも、ウイルスの混じった飛沫を吸い込んで感染するほうが、はるかに危険です。マスクをしない人がいればテーブルなどにウイルスがつきます。マスクを触る以前に、いろんな所のウイルスに触れることになるからです」

政府もハナから自信がない「まん延防止重点措置」

営業時間短縮を要請される大阪通天閣
営業時間短縮を要請される大阪通天閣

   今回の「まん延防止等重点措置」はいったいどの程度、感染防止効果が期待できるのだろうか。菅義偉政権にもまったく自信がないことを朝日新聞(4月2日付))「政権誤算しぼむ『攻勢』 『五輪機運で浮揚』見通せず」が、こう明らかにしている。

「まん延防止等重点措置を出すのは今回が初めてで、実効性は『わからない』(政府関係者)のが実情だ。大阪では2月末の宣言解除後も21時までの時短営業を継続していたが、繁華街の人出は増加傾向だ。官邸幹部は『市民の協力をどれだけ得られるかが心配』と漏らす」
「まん延防止等重点措置は、緊急事態宣言に比べ、国民に行動の変化を促すアナウンス効果が低い。政府内では、実効性が見通せない中で各地に『まん延防止ドミノ』が起こることに懸念の声もあがる。政府関係者は『まん延防止等重点措置は中途半端な制度だ。国民がまん延防止慣れしてしまうと、次に緊急事態宣言が出た時の効果が薄れる』と語る」

   西村康稔・経済再生担当相は、感染が爆発的に広がっている沖縄、山形、愛媛県にもまん延防止等重点措置を適用する可能性があることに言及している。その後、東京都をはじめとする首都圏にさらに感染者が増えれば、どうなるのか。産経新聞(4月5日)「まん延防止、都内に効果あるか 繁華街が点在、往来多く」も、まん延防止等重点措置には実効性がないことを指摘する。

「東京都の新規感染者数が増加するなか、今後はまん延防止等重点措置の適用の有無が焦点になるが、地方に比べ繁華街が多い首都でどのように対象地域を定め、実効性を高めるかが課題になる。重点措置は特定の地域からの感染まん延を抑えるための対応だが、都内には多くの繁華街が点在する。一部の地域を時短営業の対象にしても、『東京では別のエリアの繁華街に人が流れる』(都幹部)からだ」

   大阪府が大阪市だけを対象にしたように、東京都が仮に23区だけを対象に限定しても意味がない。繁華街は、周辺の多摩地域、神奈川、埼玉、千葉にも広がっており、おまけに通勤、通学などで多数の人が往来する。結局、1都3県に同じ措置をとらないとラチが明かず、緊急事態宣言と変わらないことになるのだ。

   産経新聞がこう続ける。

「田村憲久厚生労働相は4月2日、『全国に感染拡大する蓋然性が高くなれば当然、躊躇(ちゅうちょ)なく緊急事態宣言を発令すると思う』と述べた。都関係者は『大阪に続き東京の感染拡大が一気に深刻になったら、緊急事態宣言の議論の流れになる』との見方を示す」

(福田和郎)