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「100円ショップ」は生き残れるか! 円安で東南アジア仕入れ先「黄色信号」、無印・ドラッグストアとの激しい競争(1)

   近頃、「100均マニア」と呼ばれる人が増えている。何を買うにもまず「100円ショップをのぞいてから」という人のことだ。

   そんな「100均マニア」に嬉しいリポートが届いた。帝国データバンクが2022年4月2日に発表した「『100円ショップ』業界動向調査」という報告書だ。見出しには、「好調『100均』市場規模1兆円へ 大手4社の店舗はコロナ前から800店増加」とあり、順調に業績を伸ばしているようだ。

   ところがどっこい、円安と原油高のダブルパンチを受け、瀬戸際に追い込まれているという。「100均マニア」としては気が気でないだろう。調査をまとめた担当者に話を聞いた。

  • ショッピングセンターのワンフロアの半分近くを占めるダイソーの広々とした店舗(千葉県八千代市、2022年4月14日撮影)
    ショッピングセンターのワンフロアの半分近くを占めるダイソーの広々とした店舗(千葉県八千代市、2022年4月14日撮影)
  • ショッピングセンターのワンフロアの半分近くを占めるダイソーの広々とした店舗(千葉県八千代市、2022年4月14日撮影)

市場規模は1兆円へ、売上も10年前より1.6倍だが...

   調査は、100円ショップの大手5社を対象に行われた。ダイソー、セリア、キャンドゥ、ワッツ、音通の5社だが、音通は2021年10月に100円ショップ部門をワッツに譲渡しており、現在は大手4社体制だ。

   それによると、100ショップ市場が伸びている。大手5社を中心とした国内100円ショップ市場(事業者売上高ベース)は、2021年度は前年から約500億円増加の9500億円(5.8%増)となる見込みだ。2010年の約6000億円に比べると、約1.6倍の伸びだ=図表1参照

(図表1)100円ショップ市場店舗数の推移(帝国データバンクの作成)
(図表1)100円ショップ市場店舗数の推移(帝国データバンクの作成)

   当初は前年同月の売り上げ水準を下回る店舗も一部みられ、コロナ禍の巣ごもり特需からの反動による減少も懸念された。しかし、コロナ禍で増えた衛生用品などが引き続き需要を確保できた。それに加え、独自商品や高機能商品など、付加価値を高めた100円以外の価格帯の商品導入が各社で進み、マイナスをカバーできたことが大きい。

   近年はインターネットやコンビニ店舗など販売チャネルの多様化も進んだ。また、クオリティやデザインの見直し、最新のトレンドや細かな需要変化をとらえた新商品の投入など、価格以外の商品訴求力も大幅に向上した。このペースで進むと、早ければ2022年度にも市場規模が1兆円を突破する可能性がある。

   また、積極的な店舗展開も業績を押し上げる要因となった。現在の大手4社の店舗数は、コロナ前の2019年度末時点で7687店だったのに対し、2022年2月末時点では約8400店(6.4%増)と、2年間で約800店舗も増加した。各社とも強気に年間100店超の新規出店を続けており、早ければ2025年度にも1万店を突破するとみられる。

   一方、お客の購買額も順調に伸びている。100円ショップの1人当たり購買額を推定すると、2021年度(1月まで)は平均で月間635円と推計され、前年を35円上回った。10年前の2011年度は390円だったから、10年で1.6倍に増加したことになる=図表2参照

(図表2)100円ショップの一人当たりの消費額(帝国データバンクの作成)
(図表2)100円ショップの一人当たりの消費額(帝国データバンクの作成)

   このように、100円ショップが順調に業績を伸ばしているのはなぜか。総務省の家計消費状況調査によれば、食器やタオルなどの家事雑貨、ティッシュなどの衛生消耗品の21年度消費は、前年に比べ、やや減少した。コロナ禍の初年となった2020年度のような巣ごもり需要は落ちつきを見せたからだ。

円安と原油高が100円ショップの重荷に

   しかし、100円ショップ各社の積極的な店舗展開や、販売チャネルの多様化で消費者の利用機会が増えている。ほかの要因には、アウトドア用品など、日用雑貨以外の商品ラインナップが拡充されたことで顧客層が広がったことが大きい。また、「150~200円などミドルプライス」の購入が増えるなど、客単価の上昇も追い風となっている。

アウトドアブームも100円ショップを後押しした(写真はイメージ)
アウトドアブームも100円ショップを後押しした(写真はイメージ)

   ただし、ここにきて円安と原油高などの経済危機が100円ショップの重荷になってきた。帝国データバンクはこう結んでいる。

「海外に製造工場を多く有することから、円安や燃料価格の上昇といった影響を強く受けやすい。国内でも人手不足による店員の賃金上昇などコストアップ要因が多く、自動化や商品開発・流通の効率化といった、ローコストオペレーションによるコスト低減効果にも『限界がある』といった指摘もある」
「そのため、均一価格を維持しながら収益を拡大していくビジネスモデルが、長期的に成長への大きな重荷となる可能性もある。足元では300円や1000円など、ミドル・ハイプライスブランドを取り揃えた店舗出店の動きが進む。『100円ショップ』の位置付けを守りつつ、中価格帯の商品を取り揃える『ハイ・ロー・ミックス』のコンセプトが、100円ショップの主流となるのか注目される」

「まず100円ショップに行く」という行動様式が定着

   100円ショップの未来はどうなるのだろうか。J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介氏にさらに詳しく話を聞いた。

――コロナ禍で苦戦する小売業が少なくないなか、100円ショップが伸びることができた一番大きな理由は何でしょうか。

飯島大介さん「コロナ禍では感染の恐れから消毒薬やマスクなど衛生用品の需要が大きく伸びました。100円ショップだと100円で安いし、ファーストステップとして『まず100円ショップに行く』という行動様式が定着としたことが大きいです。100円ショップ側もそのトレンドを意識して、衛生用品を大量に仕入れました。
トレンドを自分から作るのではなく、後から追いかけるというのが100円ショップの戦略です。コロナ禍の頃からキャンプやアウトドアがブームになりました。100円ショップはそのトレンドに乗り、売れているほかのアウトドア用品にデザインが似た、もっと安いものを作って並べました。デザインも新しいものを作るというより、安くして追いかけるやりかたです」

   好調な「100均」市場だが、円安や原油高などの影響はどうだろうか――。引き続き、担当者に詳しく話を聞いていく。<「100円ショップ」は生き残れるか! 円安で東南アジア仕入れ先「黄色信号」、無印・ドラッグストアとの激しい競争(2)>に続きます。

(福田和郎)