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OJTリーダーに抜擢したのに、自信がないと言う部下...どう励ます?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE20(前編)】(前川孝雄)

   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE20」では、新入社員の教育を担うOJTリーダーに抜擢したのに、自信がないと言う部下のケースを取り上げます。

「リーダーシップって、何なのでしょうか?」

【上司(課長)】Aさんは、いよいよ今年から新入社員の教育を担うOJTリーダーだ。期待しているから、ぜひ頑張ってほしい!
【部下(Aさん)】はい...。しかし、私に務まるかどうか...自信がないんです。
【上司】誰しも最初は不安を感じるものだ。君は仕事の実績も高く、皆のお手本なんだから、自信を持って大丈夫だよ。
【部下】でも、今までは和気あいあいとやれましたが、あらためてリーダーと言われると...。皆とうまくやれるか、心配です。
【上司】まあ確かに、時にはメンバーに厳しいことも言わないといけないが...。しかし、そこは毅然とリーダーシップを執ればいいんだ。
【部下】ですが、OJTリーダーは管理職ではないので、命令できる権限もなく、皆もそれはわかっています。それでもリーダーだなんて...。そんな立場で発揮できるリーダーシップって、いったい何なのでしょうか?
【上司】うーん。それは...。(あらためてそう聞かれると、難しいな...)

真のリーダーシップとは何か、いま一度考える

   今回のCASEは、初めてOJTリーダー役を任せる部下とのやりとり事例です。部下は、自分はまだ管理職=公式リーダーではないので自信がない。そんな自分が執れるリーダーシップとは?...と悩んでいます。

   この問いは、実は「真のリーダーシップとは何か」という大切なテーマです。そこで、常々私が新任のリーダーが悩むこの問いに応えてお話しする、後輩育成のポイントを挙げましょう。これまで本連載の内容と重なる点もありますが、復習として、また皆さんが次世代リーダーを育成する際のヒントとして参考にしてください。

   前提は、OJTリーダーが、職務権限によってメンバーに指示・命令を行う立場ではないこと。管理職の皆さんも初心に返り、内省してみてください。

   以下、冒頭CASEの部下(OJTリーダー)の問いに、直接応える形式で語っていきます。

相手との信頼関係をつくる~傾聴と相互理解

   OJTリーダーの役割は、メンバーの成長意欲を引き出しながら関わる支援者だと心得ましょう。まずは、相手との基本的な信頼関係をつくること。それなくして、相手の心を動かし仕事や成長への意欲を導くことはできないからです。

   相互理解を少しずつ深め、お互いの距離を縮めること。面談や声かけの場を積極的につくり、メンバーの入社動機や、職場や仕事への夢や期待、また自分の持ち味や強みをどう認識しているかなどを聴き、相手の理解に努めましょう。アドバイスの前に、まず「傾聴」です。

   まだお互いに距離感があり、率直な話がしにくいなら、OJTリーダーの方から進んで自己開示をしましょう。職場や仕事の話題だけではなく、自身のプライベートや趣味について話すのも効果的です。

   また、かつての失敗談を話し、あえて自分の「弱み」を話すと、ぐっと距離感が近づき、安心感と親近感を与えます。相手に関心を寄せ理解しようとする姿勢や、話しやすい雰囲気や関係づくりに努める気持ちが伝わることが大切です。

   以上の点を踏まえ、真のリーダーシップをさらに発揮するための視点と姿勢について、<OJTリーダーに抜擢したのに、自信がないと言う部下...どう励ます?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE20(後編)】(前川孝雄)>で、解説していきます。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。