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「三割高下に向かえ」を肝に銘じた三菱UFJFG株 さて、いつ売ろうか?(石井治彦)【格言で買う株式投資】

   「三割高下に向かえ」という相場格言がある。日本証券業協会の相場格言集にある株式売買のタイミング編には、「あらかじめ目標を立てておき、何割上がったら後はどうあろうとも利食い売りしようとする戦法」と説いている。

   「三割高下に向かえ」という相場格言がある。日本証券業協会の相場格言集にある株式売買のタイミング編には、「あらかじめ目標を立てておき、何割上がったら後はどうあろうとも利食い売りしようとする戦法」と説いている。

   ただし、これは波乱含みの相場には通用しにくい側面があり、ふだんの穏当な値動きのときだけに応用すべきだろう。「そうした個別の株式に対する戦法を教えるほかに相場全体の動きを把握する意味も持っている。つまり『3割』というところは、上げにしても下げにしても一つの転機になるものだ。したがって、ある出発点から3割上がったところは『売り』、3割下がったところは『買い』のサインとみるわけである」との教えが書かれている。

「株価の里帰り」を果したMUFG株

   2021年7月、「株価は上がったり下がったりしても、元の水準に戻ることがある」という相場格言、「株価の里帰り」で三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)株を取り上げた。

◆関連記事:
J-CAST 会社ウォッチ「『株価の里帰り』と言うけれど、三菱UFJ株は『いつ帰ってくる』?」(2021年7月29日付)
https://www.j-cast.com/kaisha/2021/07/29416966.html

   この記事では、MUFG株は「株価の里帰り」を待つ状況にあり、「高値圏の900円台に帰ってくる日はそう遠くないだろう」。そして、経済活動の再開に伴う景気回復による、「1~2年後のMUFGの株価上昇が楽しみだ」と記した。この時のMUFG株の終値は587円10銭(2021年7月28日時点)だった。

   そのMUFG株は、2023年1月13日の終値で977円。まさに「株価の里帰り」の値を付けた。この株価は奇しくも2006年4月に付けた高値195万円(2007年9月末、1株を1000株に分割)の分割後の株価1900円の半値戻しにあたる975円となっている。

   昨年(2022年)の株式市場を取り巻く社会情勢を振り返ると、2月に起こったロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴うエネルギー(原油や天然ガス)や小麦などの穀物の価格上昇。世界的なインフレで、欧米の金融引き締めによる相次ぐ利上げと急激な円安が加わり、国内では企業が一斉に商品への価格転嫁に動き出した。

   また最近では、中国のゼロコロナ政策の撤回により、年末にかけて都市部で再び感染が広がった結果、景気後退が鮮明になった。2022年の国内総生産(GDP)成長率は3.4%と、これは1976年以降で最低だった2020年の2.2%に次ぐ、2番目に低い水準だった。こうした中国経済の悪化が、今後の世界経済に悪い影響を招くのではないかと懸念されている。

日本企業、中国から移転? 海外に強いMUFGの出番!

   そうしたなか、日本では長く続いたゼロ金利政策が、いよいよ転換期を迎えそうだ。4月には、「アベノミクス」を後押ししてきた日本銀行の黒田東彦総裁が代わることもある。日銀が12月20日に、10年もの日本国債の上限金利を0.25%から0.5%に引き上げるとの方針を明らかにした「事実上の利上げ」に踏み切ったことで、銀行の住宅ローンの金利がわずかだが上がった。本格的な利上げにはまだ遠いが、金利が付くようになれば、銀行にとっては収益状況が大きく改善する。

   週刊東洋経済「2023年大予測」(2022年12月14日、12月31日新春合併特大号)のメガバンクの記事では、「コロナ禍や海外金利の上昇といった不透明感はあるものの、3メガバンクの業績は堅調だ」としている。今後の課題については、「海外で相次ぐ出資・買収成長の果実が取り込めるか」と書かれている。銀行株には、チャンス到来といえそうだ。

   当面は、中国のゼロコロナ政策の影響によるサプライチェーンの断絶に苦しむであろう日本企業は少なからずある。サプライチェーン強化に向けて、生産拠点である中国への一国集中から東南アジアへの移転、あるいは国内回帰などの施策を推し進めることになる。

   そうなると、海外業務に強いMUFGの出番だ。「海外で相次ぐ出資・買収成長の果実の取り込み」を見据えて、相場格言「三割高下に向かえ」に従い、1月13日終値の3割増しとなる1296円(997円×30%)を当面の目標に、売却を考えることにした。

   最近のMUFG株の株価チャート(日足)を見ると、急激な株価上昇に伴う利益確定売りの調整も、終了まぢかと見える。次へのステップが待たれる。(石井治彦)

【三菱UFJフィナンシャル・グループ】(8306)
2023年2月8日現在 保有3100株 平均取得単価668円91銭
昨年来高値2023/1/13 995円80銭
昨年来安値2022/1/ 4 630円10銭
直近 終値2023/2/ 8 943円30銭



プロフィール
石井治彦(いしい・はるひこ)
投資歴25年。「現物株式取引」と「長期投資」が基本姿勢。情報源はもっぱら会社四季報や日本経済新聞、経済誌など。また、株主総会やIR説明会には、できるだけ顔を出すようにしている。東京都出身。