2024年 4月 29日 (月)

「1+1=∞」であると証明 ミルバ&アストル・ピアソラ

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ミルバ&アストル・ピアソラ
『ライヴ・イン・東京1988』
DDCB-13012/3(2枚組)
3360円
12月16日発売
バウンディ


   異なる才能が出会い、互いに想像を超える輝きを放つ。1+1=∞という数式が当てはまる事など滅多にないのだが、その滅多にないことが起きたのが、この60年代を代表するイタリア・カンツォーネ界の宝=ミルバと、「リベルタンゴ」で知られるアルゼンチンの誇るバンドネオン音楽の改革者であり、最高の演奏家でもあったアストル・ピアソラの、日本の東京での1988年のコンサートだった。中野サンプラザでの公演は、NHKが「芸術劇場」で「ピアソラの全て」というタイトルでオンエアしたのだが、余りにもすばらしいステージで「失われた音源」と呼ばれ、世界中のファンの間で当時から語り草だった。幻の音源と化していたのだ。

   ピアソラ・ファンにしてみれば、この公演後わずか4年で亡くなるピアソラ最後の来日公演となったものであり、ミルバ・ファンにしてみればピアソラとの数年間の共演で生み出された芸術性の高いミルバの新境地を披瀝した最後の公演となったもの。完成された、2人の精神的高みでの融合を聴く思いがする。

   そして、音の良さに驚かされる。前述したNHKの録音チームが録った音なのだが、その技術力は特筆ものだ。ピアソラのバンドネオンの音は、あくまで力強く、バンドネオンの改革者の面目躍如といったものだし、ミルバの歌も、ピアソラが「最高のピアソラ歌い」と絶賛した意味が良く分る円熟の内容。ちなみにピアソラはこの時、五重奏団を率いてきたのだが、彼等の演奏もアグレッシヴで聴き応え充分だ。

   幻と呼ばれ、21年という時を経て初めて世に出たミルバとピアソラのライブ音源だが、それは2人のそれぞれのフィールドから判断しても、まさに傑作と呼べるものだろう。

加藤 晋

【ライヴ・イン・東京1988  収録曲】
DISC 1
1. タンゲディアⅢ
2. わが死へのバラード(6時が鳴るとき)
3. ルンファルド
4. 迷子の小鳥たち
5. もしもまだ
6. ブエノスアイレスの夏
7. 孤独の歳月
8. ロコへのバラード
9. ムムキ
10. ミケランジェロ70
DISC 2
1. 行こう、ニーナ
2. 忘却(オブリヴィオン)
3. チェ・タンゴ・チェ
4. アディオス・ノニーノ
5. 3001年へのプレリュード(私は生まれ変わる)
6. フィナーレ"ブレヒトとブレルの間で"
7. 天使の死
8. ミルバの挨拶
9. ロコへのバラード (アンコール)
10. チェ・タンゴ・チェ (アンコール)



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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