2024年 3月 19日 (火)

在住邦人が罹る心の病、「パリ症候群」って何だ?

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   先日、パリの日本文化会館で、京都在住の映像作家・日本画家の島井佐枝さんの映画『パリ・シンドローム(症候群)』の上映会&討論会が行われた。会場に入れない人が出るほどの人気で、しかも観客の8割以上がフランス人だった。在仏日本人のみならず、フランス人の関心もひく"パリ症候群"とは一体、何なのか?<モノウォッチ

パリの人間は意地悪?

映画『パリ・シンドローム』の1シーン。心のバランスをくずしていく主人公、ちはる
映画『パリ・シンドローム』の1シーン。心のバランスをくずしていく主人公、ちはる


島井佐枝監督
島井佐枝監督

   パリ症候群とは、パリ滞在中の日本人が、フランスの文化・生活習慣に慣れず、自己主張の強いフランス人とのコミュニケーションがうまくいかず、また、イメージしていたパリ暮らしと現実とのギャップにショックを受け、抑うつ状態、被害妄想状態などに陥る精神的・心理的トラブルのことで、自殺にいたるケースもある。その名称は、パリ在住の精神科医太田博昭氏の著書、『パリ症候群』(トラベルジャーナル社刊)に由来する。

   映画『パリ・シンドローム』は男性優位の日本社会に嫌気がさし、美術史の勉強のために、パリに留学した30代女性の主人公が心のバランスを崩していく様子がドキュメンタリー・タッチで描かれる。島井監督自身が語学とスケッチの勉強のためパリに一年間滞在した時に、周りの日本人留学生がパリの生活に馴染めず、引きこもっていく様子を目の当たりにしたのだという。

   ロンドン留学中に精神衰弱に陥った夏目漱石の時代から、異国に住めば、文化・コミュニケーションの違いに精神的ショックを受けるのは当り前、とも思えるが、太田氏の著書によると、この精神的トラブルは、パリでの発生率が圧倒的に高いらしい。

   会場で隣にいた初老の金髪マダムは「日本を旅行したことがあるけれど、清潔だし、人は優しいし、落としたものがすぐに見つかる素晴らしい国。その環境に慣れた人がフランスで鬱になるのは無理ないわ。特にパリの人間は意地悪だし」。念のためマダムに「フランス人でいらっしゃいますよね?」と尋ねたら、ウィ!とのお返事が。また、監督やプロデューサーを囲んだ討論会で、フランス人の日本史学者が「他の地方都市なら、人もパリジャンと違って優しいので、このような問題は避けられる」と発言していた。パリジャン(・パリジェンヌ)はフランス人の間でも意地悪な人種と定義されているようだ。


【プロフィル】
江草由香(えぐさ ゆか)
フリー・編集ライター。96年からパリ在住。ライターとして日本のメディアに寄稿しながら、パリ発日本語フリーペーパー『ビズ』http://www.bisoupfj.comの編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。趣味は映画観賞。

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