2016年5月に設立された「Talent Cloud(タレントクラウド)」(東京都千代田区)は、企業の採用活動に「タレントプール」という考え方を導入した新しい採用管理システムを提供している。従来の採用方法では難しかった、企業と求職者が継続的に関係を持ちながら、両者にとって適切なタイミングでリクルーティングを行うことができる仕組みだ。
「タレントプール」は欧米などでは広く知られているが、日本ではまだなじみが薄い。一体どんなシステムで、企業と求職者にとってどんなメリットがあるのか。タレントクラウド代表の寺師岳見社長に話を聞いた。
長期的な採用活動で、企業と求職者のすれ違いを解消
現在日本での一般的な採用活動は、企業が一定期間中に求人募集をかけ、「採用」か「不採用」の結果通知をもって完結する場合多い。しかし実際には企業側が
「魅力的な人材だが、今回は採用を見送らざるを得ない」
というジレンマを抱えていたり、有能な人材が
「この企業に興味があるけど、今は募集を行っていないから」
という理由で他の企業に流れてしまう、といったすれ違いが頻繁に起きている。
タレントプールは、このように「縁と運」に左右されがちな採用活動を改善し、企業と求職者が互いにとってベストなタイミングで雇用契約を結びやすくするためのシステムだ。
大まかな流れとしては、まず企業が「タレント登録」という機能がついた「自社の採用専用サイト」を作成する。求職者はタレントプールを受け付けている企業にタレント登録することで自身の経歴などの基本情報を企業に提供し、その企業から採用に関する活動の情報を随時受け取ることが出来る。
タレント登録の期間に制限はなく、求職者が登録を解除しない限り継続的に企業との関係が続く仕組みになっている。企業はタレントプールの登録者が自社に対してどんなアクションを起こしたか、といった情報を詳細に管理し、適切なタイミングで必要な人材へとアプローチをかけやすくなるというわけだ。
寺師社長「きっかけは中小企業経営者の採用難」
―――どんなきっかけで始まったサービスですか
寺師社長「かつてディーノシステムという会社で、『社長tv』という経営者のインタビューを配信するウェブ番組に携わっていました。そのなかで、特に中小企業の経営者から採用活動が非常に難しくなっている、という声を多く聞きました。求人サイトに広告を出しても応募が来なかったり、良い人材が大手企業に流れてしまい確保が難しいというのです。そこで解決法として何か新しい採用管理サービスを提供できないかと考え、企業と求職者が直接つながりやすい『タレントプール』にたどりつきました」
―――企業にとってどんなメリットがありますか?
寺師社長「一人あたりにかかる採用コストはここ5年の間でかなり高くなっているといいます。また少子化の影響で企業の募集に対して求職者の数が減り、今後さらに採用が難しくなることが予想されます。そのため、今からタレントプールで自社に興味のある人とつながりを作ることで、たとえば数年後には即戦力候補となるタレントプールができ、その中から一人でも良い人材を確保できれば、一般的な採用サイトなどを使う場合に比べて大幅にコストを下げられる可能性があります」
―――求職者にとってどんなメリットがありますか?
寺師社長「タレントプールは、就職活動期間の枠にとらわれず長期的に企業と関係を保てる点が特徴です。たとえば内定を辞退した会社であってもタレントプールの登録継続が可能です。その人が別の会社に勤務して数年後に転職を考えることになった場合、タレント登録を継続していれば、かつてタレント登録した会社に再びアプローチすることができます。一度辞退した会社に対してアクションを起こすことに抵抗を感じる人は多いですが、実際は一度逃した人材であっても有能であれば受け入れたい、という企業は多くあります。タレントプールを利用することで、働き方の選択肢が広がると思います」
―――他の就職サイトと一番異なる点はどこですか
寺師社長「『候補者を育てながらリクルーティングする』という考えで採用活動をサポートする点です。企業側はタレントプール登録者が自社サイトのどのページに、どれくらいの頻度でアクセスしたかといった情報を詳細にチェックできます。そこから登録者が今必要としている情報を選び、適切なタイミングで提供する。これにより時間をかけて求職者が自社のファンになり、互いに信頼関係を築きやすい効果的な採用活動を実現します」
タレントプールを構築できる機能を備えた採用管理システム「TalentCloud」の利用料金など詳細はホームページで確認できる。