2018年 12月 17日 (月)

ウェブのバブル 中川淳一郎さんは「あと3~5年」と警告する

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   週刊新潮(5月31日号)の「この連載はミスリードです」で、ネットニュース編集者の中川淳一郎さんが昨今の「ウェブ・バブル」に警鐘を鳴らしている。インターネットへの広告増やウェブ媒体の勢い、その結果としての原稿料アップは先が見えていると。

   先日の「ライター交流会」で司会を務めた中川さん、最後に大意こうまとめたという。

「今年、ウェブの広告費がテレビを超すという予測があります。ウェブメディアにカネが流れ、ライターのギャラが上がり、記事風広告を含め文字へのニーズも高まっている。しかしその理由は、ウェブの広告効果が過大評価されているからです」

   そして「ウェブ広告にカネを払っている人々は、日本人特有の『バスに乗り遅れるな』的に、ネットに広告を出さなくてはマズい!と焦って過剰にムダ金を使っているだけだ」

   中川さんによれば、ウェブで稼ぐライターは過渡期のドタバタ劇に乗じているだけで、「あと3年もすれば広告主も本当の効果が分かって...このバブルは終わる」。

   日本語サイトへのアクセスはすでに頭打ちだという。世界的に見ればマイナー言語の悲しさで、人口減で「使い手」が減れば、アクセスも先細りになるのが道理である。

「私自身もウェブニュースの仕事をこの12年間やっていて、2011年ぐらいまでの『うひゃっ! 先月比3倍!』みたいなことは以後発生していない」
  • スマホでネットをチェック、は日常の光景
    スマホでネットをチェック、は日常の光景

消えるアナログ社長

   中川さんはウェブ・バブル短命論の根拠を重ねていく。

「インターネットが日本でも一般に普及し始めてから今年で25年...革命的なことは多数起こりました。しかし、変わっていない点は、企業の実権を握っている人々がウェブのことをまだよく分かっていないということなんですよ」

   問題は〈ワシはアナログ人間ですからな、ガハハ!〉というような社長さんである。

「こうした権力者があと3~5年もすれば一線から退き...ようやく日本のインターネットは実態に即した発展を遂げると私は考えております」

   そして結語となる。

「ウェブそのものはともかく、『日本のウェブ』の将来性には危機感を持って臨むべき状況にあることを、ここに宣言します」

   本人曰く「ウェブのお陰で生活が成り立つ」立場を考えれば、なかなか重い悲観である。

4年続けて二桁成長

   電通によると、日本の総広告費は2017年、前年比1.6%増の6兆3907億円で6年続けて前年を上回った。旧来のマスコミ四媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)が2.3%減なのに対し、インターネット広告は15.2%増と二桁成長を続けている。実額の1兆5094億円は中川さんの言う通り、テレビ(地上波+衛星)の1兆9478億円に迫る。

   ただ、ネットにつぎ込まれる広告費は旧媒体からの「乗り換え」で、いわゆるパイの奪い合いである。メディア自体が日本語だから、アクセスする人の多くは減りゆく日本人...となればネットの日本語広告、すなわちパイ全体が膨らむことはなさそうなのだ。

   上記コラムの副題は「私も英語で漫画ブログやろうかしら」。いわば共通言語のマンガはさておき、英語が相手にするウェブ市場は数十億人、これに対し日本語市場は1億人。そういうことである。新聞もテレビも同じこと。そこそこの人口と、言葉という障壁=防波堤で世界市場の荒波から守られてきたメディア産業の宿命だろう。

   私は超オールドメディアに40年近く身を置き、還暦を過ぎてネットにお邪魔した新米。だから、玄人からいきなり「バブルはあと数年」と宣言されると身につまされる。

   中川さんには、〈恐ろしいことに、ネットはバカに発信力を与えてしまった〉という至言がある。ツイッターやブログなどを念頭に置いた言葉か。バカも利口も、私のような人畜無害も、しょせん「縮む井の中の蛙」ということになる。バブル後もゲロゲロとやり続けるには、鳴き声に磨きをかけるか、井戸から飛び出すほかない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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