2020年 11月 24日 (火)

肉肉しい肉 金田一秀穂さんは食レポの新表現を否定せず、面白がる

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痛々しいのをひとつ

   食レポ全盛の昨今、すっかり手あかのついた表現も確かに多い。タレントから総理大臣まで、乱用著しい「ジューシー」が典型だ。「口の中でとろけます」とか「見かけは濃厚なのに意外にあっさり。これはクセになる」と聞いても、もはや食べたいとは思わない。

   その点、肉肉しいが目新しいことは間違いない。思うに「〇〇しい」が使えるのは、リズム的に二音の食材だけだ。「さかなさかなしい」「やさいやさいしい」は苦しい。「ぎょぎょ(魚魚)しい」とすれば微妙だが。

   いくら音のリズムが良くても、初めて聞いた「肉肉しい」には抵抗を覚える向きが多いかもしれない。私も、若いタレントらしい未熟表現の一つと上から目線で受け止めていた。しかし、金田一さんは「画期的で説得力がある」と肯定的、絶賛なのである。

   「次が楽しみ」という結語は、言葉を糧とする人の正直な期待といえる。同じく日本語を生業とする者として、私もひとつ「イタイタしい」というのを考えてみた。いかにもイタリアンという意味で、料理と店の両方に使えそうだ。

   たとえば、オリーブ油とニンニクを大量に使い、素材の持ち味を生かした仕事。店はくだけた雰囲気で、元気いっぱいの料理人と店員たち、もちろん定番の大衆メニューがそろう。テーブルクロスが赤白(または緑白)のチェックで、布ではなくビニール製であれば最高だ。

   あと、これはイタリアンに限ったことではないが、もともと良心的な勘定をたまに安いほうに間違えてくれたら、言うことはない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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