2024年 4月 27日 (土)

JUJU、「YOUR STORY」
ベストアルバムで伝えようとしたこと

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感動的なお涙頂戴では終わらない

   語り部としての自覚、というのだろうか。これまでのアルバム発売時や自身のホームページなどで「愛とは」というテーマでリスナーの体験談などの書き込みを求めていたこともある。2012年に出たベストアルバムは「BEST STORY~Love stories」「BEST STORY~Life stories」の二枚。アルバムチャートの1位、2位を占めた。「YOUR STORY」は、「Love」「Life」とテーマを分けた前回よりも更に「愛」に特化している。そして、内容も更に踏み込んだものになっている。

   「YOUR STORY」の52曲の流れが、一般的な「ラブストーリー」に収まっていないのは、DISC4を聴けばわかる。その代表的な例に、一昨年のアルバム「I」に入っていた「かわいそうだよね」がある。

   自分が「選ばれた女」と自負している女性が「かわいそうだよね」「ああはなりたくないね」と見下したように同情していた相手と今の自分を比較している歌。ある時、自分がそういう存在になってしまっていることに気付いてしまう。「かわいそうなのはあたしだった」「あたしにしかできないことなど何もなかった」と自虐的に歌っている。作詞作曲は平井堅だ。

   「私ってやさぐれなんだけど、なかなかそうは見られない、そんな歌は誰も書いてくれないし、と話してたら堅さんが俺が書こうか、と言ってくれて出来た歌です。テーマはやさぐれ、です(笑)」

   JUJUのコンサートに初めて足を運んだ方は、彼女のさばけた話っぷりに新鮮な印象を持つに違いない。ジャズが歌いたくて10代の時に渡ったニューヨーク仕込みの話のテンポと回転の速さ、そして、客席に対しての細やかな気遣いと気風の良さ。インタビューで「将来は寝そべる事が出来るようなカウンターのあるバーをやりたい」と言っていたこともある。「YOUR STORY」のフィナーレも、感動的なお涙頂戴では終わらない。そういう「愛の予定調和」を一蹴したような曲が、52曲目の「STAYIN' ALIVE」だ。冒頭から「涙流せば虹が出るセオリー もう飽きちゃってるんです」なのだから。泥沼でプライドがズタズタになって、シャワーの中で一人泣こうと、「かかってきなさい未来」「痛いの飛んでいけ」と歌い飛ばしてしまうあっけらかんとした大人の前向きさは、ここまでのキャリアがあってこそだろう。

   彼女の音楽人生を決定づけた「奇跡を望むなら...」は、今、受験ソングとしても聞かれているのだと言う。「奇跡を望むなら 泣いてばかりいちゃだめさ」という歌詞が一縷の望みに向かう若者たちの気持ちに届いた。明日が見えない2020年の日々の中でどんな風に聞かれるだろう。

   人を愛するという気持ちに年齢はない。DISC1の新曲「あざみ」は、愛する人を「見送る歌」だった。

   「YOUR STORY」52曲の「喜怒哀楽」。愛とはこんなにも苦しく、こんなにも愛おしいものなのか。YOU TUBEでは、「Theater」別の全曲のライブ映像が公開されている。

   9月にはツアー「YOUR STORY」が決まっている。その時には、全国でライブ活動が再開されていることを祈るばかりだ。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール
タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーティスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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