交通事故の保険金詐欺を許さない AIが不正を見抜く時代に

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   交通事故に関連した保険金詐欺事件が目立っている。最近では2021年11月に岐阜県で、12月には北九州で摘発されている。いずれも「医師」ではなく、「接骨院」が関与している。なぜなのか。

  • 保険金をだましとる行為は許せない
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グループで犯行を繰り返す

   岐阜新聞は11月25日、「交通事故でけが『29日通院』とウソ...実は4日 保険金詐取未遂疑い、接骨院経営の男と通院していた女を逮捕」という事件を報じている。

   交通事故のけがの治療にかかった通院日数を水増しし、保険金をだまし取ろうとしたというのだ。

   岐阜県警によると、接骨院経営の男と、追突事故に遭って接骨院に通院していた女が共謀し、実際は計4日間しか通院していないのに計29日間通院したと偽り、施術費名目で保険金計約21万1850円を保険会社からだまし取ろうとした疑い。男が通院日数を水増しした施術証明書と施術費明細書を作成し、保険会社に提出していたという。

   読売新聞は12月13日、「故意に事故起こし保険金2600万円詐取、男女25人逮捕...整骨院元院長も通院日数水増しか」という別の事件を報じている。

   福岡、佐賀両県の路上などで故意に事故を起こし、保険金をだまし取ったなどとして、福岡県警が男女25人を詐欺などの容疑で逮捕、1人を書類送検していた。こちらはグループの犯罪となっている。

   FBS福岡放送によると、このグループには、整骨院を当時経営していた男も含まれていた。虚偽の施術によって保険金を水増しし、請求していたという。

院長と患者の双方が詐欺罪で逮捕

   類似の事件は以前から多発している。警視庁のウェブサイトは「交通事故に絡む保険金詐欺」について、「交通事故を偽装したり、実際に発生した交通事故を利用し、被害の程度等を偽って保険金を騙(だま)し取ること」と定義。「最近では、実際に交通事故で怪我(けが)をして、整骨院に通院した際、院長から『通院日数を水増しすれば、保険金が多く貰えますよ』などと話を持ちかけられて同意し、保険金を不正に請求した結果、院長と患者の双方が詐欺罪で逮捕される事件が発生しています」などと具体例を挙げている。

   日本損害保険協会のサイトには、「不正請求」の事例として、以下のようなケースが掲載されている。

「被害者である損保太郎と加害者である保険花子は、○年○月○日にわざと自動車事故を起こして保険金請求をしている。修理工場である△△も不正行為者と結託し、不正請求に協力しているようである。 ○年○月○日に自動車事故にあった損保二郎は、通院先である△△整骨院と結託して、通院日数を実際の通院日より多く申告して保険金で儲けたと吹聴している」

「隠れ人身事故」が潜む

   『交通事故は本当に減っているのか?』(花伝社)によると、交通事故に関して、警察の全国統計と、損保料率機構が毎年公表している自賠責保険の支払い件数には大きなズレがある。自賠責で支払われている件数の方が、警察統計よりもはるかに多い。「隠れ人身事故」が多数あるというのだ。

   同書によれば、損保料率機構は、「人身事故として警察に届出がなされなかったものであっても、実際に負傷が確認された場合には支払うことが必要であり、近年、このような支払いが増加している」ことを認めている。

   このことは、自賠責保険に関する公的な会議、「自動車損害賠償責任保険審議会」でしばしば問題になっている。

   同書によると、審議会で特にこの問題を熱心に繰り返し取り上げているのは、日本医師会の委員だ。というのも、「むち打ち」などの場合、柔道整復師による「医療類似行為」の証明でも自賠責から保険金が下りているからだ。その額は年間600億円を超えているのだという。本来は医師が受け持つ「医療行為」が、医師ではない人によって行われ、その行為に関して保険金が下りていることは、医師会として看過できないというわけだ。

不正のチェックに新手法

   21年9月16日の朝日新聞によると、2015~19年に全国の警察が摘発した交通事故関連の保険金詐欺事件は計868件で、被害額は約1億8000万~3億5000万円前後で推移している。書類の精査だけで不正を見抜くのは難しいこともあり、日本損害保険協会は昨年4月から、人工知能(AI)による不正検知システムを使い始めたという。

   協会によると、保険会社や共済組合など26団体から「車両所有者」「受傷者」など過去の保険金の請求履歴や関係する人物のデータを集めて分析。過去の不正請求事例と照らし合わせて似た点などを抽出し、AIが不正の疑いを調べる。

   不正疑いが検知された場合、自動で保険会社などに通知される。過去に不正請求に関与した疑いのある人物や法人を見つけやすくなったという。

   朝日新聞によると、大手損保会社は、保険金の申請があった際、「レンタカー」「同乗者が多い」などいくつかのキーワードで不正請求か否かを注意深く確認しているそうだ。

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