2024年 4月 19日 (金)

コロナ予算16兆円の怪しい行先 巨額の施設は使われず給付金詐欺は多発

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   新型コロナウイルスの対策で莫大な国家予算が使われているが、その配分や使われ方がずさんではないか、という指摘が相次いでいる。コロナと直接関係がないことに使われていたり、大金を投じて作った施設が、あまり利用されていなかったりするからだ。検証作業も不十分なままになっている。

  • 国家予算を原資とした巨額マネーはどこに行った 
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交付金で「町幹部の公用車購入」

   2022年5月30日の参院予算委員会で、立憲民主党の蓮舫氏は、新型コロナウイルス対策を目的にした地方創生臨時交付金の使途について取り上げた。この交付金は、コロナ対策であれば自治体が自由に使える制度設計で、20年度からこれまでに約16兆円が計上されているという。

   朝日新聞によると、同氏は「計画や目的に問題があると思う事例」を次々と列挙した。「ハッピーマリッジ応援」「自治体指定のゴミ袋の全世帯配布」「町幹部の公用車購入」「公立学校のトイレ改修」などに同交付金が使われていた。

   質疑で、事業計画を審査する内閣府地方創生推進室の担当者は、「なるべく早く感染防止策などの対策を講じられるようにスピード感を持って審査した」と強調。この答弁に蓮舫氏は「スピード感を持って確認が緩くなった」と追及し、制度見直しを求めた。

   岸田文雄首相は「(臨時交付金の)7割は医療であったり、協力金であったりに使われている」と説明。残り3割は「国としてもしっかり検証をして、説明する努力はしないといけない」と語った。

10兆円以上の使い道が不透明

   NHKによると、新型コロナ対策に当てられた国の予算は「異次元の規模」。流行が本格化した2020年度だけで、総額77兆円。国民1人あたり、61万円という計算になる。東日本大震災の復興予算が、10年あまりの総額で約32兆円であることからも、コロナ予算の突出ぶりがわかる。ワクチン接種、国のマスク配布、GoToイート、感染症の拡大防止から経済対策まで、使い道は多岐にわたる。

   コロナ対策では、こうした通常の予算の他に予備費も投入されている。国会審議を経ず政府の裁量で使い道を決められるものだ。日経新聞は22年4月23日、この「コロナ予備費」について調査した記事を公開している。

   「政府が新型コロナウイルス対応へ用意した『コロナ予備費』と呼ばれる予算の使い方の不透明感がぬぐえない。国会に使い道を報告した12兆円余りを日本経済新聞が分析すると、最終的な用途を正確に特定できたのは6.5%の8000億円強にとどまった。9割以上は具体的にどう使われたか追いきれない。国会審議を経ず、巨費をずさんに扱う実態が見えてきた」と手厳しい。

   12兆円余りをおおまかに分類すると、多いのは医療・検疫体制確保向けの4兆円。次いで地方創生臨時交付金として地方に配られた3.8兆円。公用車や遊具を購入するなど、疑問視される事例もあり、自治体が予備費を何に使ったかまで特定するのは難しい、と指摘している。

1000床の施設も閉鎖

   給付金をめぐる事件も続いている。山口県阿武町では、町民463人を対象とした国の臨時特別給付金4630万円を誤って1人に送金し、取り返すのに苦労した。警視庁は、家族ぐるみで約9億6000万円もの持続化給付金を不正受給した疑いがある詐欺事件を摘発している。

   朝日新聞によると、要件を満たさなかったとして、持続化給付金の受給者が自主返還を申し出た件数は5月26日時点で約2万2000件。このうち約1万5000件についてすでに返還があり、その総額は約166億円に上るなど、制度自体のずさんさが指摘されている。

   読売新聞は5月30日、「60億円かけて設置のコロナ臨時施設、利用303人のみで閉鎖」という記事を公開している。

   大阪府が新型コロナウイルス対策で開設した国内最大の臨時医療施設「大阪コロナ大規模医療・療養センター」(大阪市住之江区)が、5月末で閉鎖される。約60億円をかけて1000床を運用したが、利用者は1日最大70人、累計でも約300人にとどまったという。

   臨時医療施設とは、 医療機関が不足した場合、知事が改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づいて開設するもの。費用は全額、国から支給される。

   このほか、期限切れワクチンの廃棄やキャンセル問題などについても各紙で報じられているが、政府はコストの詳細を明らかにしていない。

「検証」の文字が消える

   岸田文雄首相は、昨年10月の所信表明演説で、新型コロナ対策について「徹底的に分析し、何が危機管理のボトルネックだったのか検証する」と表明していた。時事通信によると、政府の新型コロナウイルス対策について検証する有識者会議の初会合が開かれたのは5月11日。関係者への聴取は2回で終了し、6月上旬には早々と報告書をまとめる予定だという。

   聴取したのは、経済団体や地方自治体の代表、政府分科会メンバーらにとどまり、安倍晋三元首相、菅義偉前首相ら歴代の政権幹部は呼んでいない。「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」という正式名称からは、「検証」の2文字も外されている、と時事通信は指摘している。

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