2024年 5月 19日 (日)

言葉は生き物 サンキュータツオさんが論じる「忖度」の黒印象

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早い者勝ち

   サンキューさんの連載は10月に始まり、本作が4回目。これまで「エモい」「雑誌」「タイパ」と取り上げてきて、今回が「忖度」という流れである。

   さて忖度という言葉、難読漢字の世界では知られていたものの、ニュースの見出しや日常会話に登場し始めたのはここ数年か。言葉としてのメジャーデビューである。

   サンキューさんが編集に参加した広辞苑によると、〈他人の心中をおしはかること〉とある。一方、類語として筆者が触れた斟酌は〈その時の事情や相手の心情などを十分に考慮して、程よくとりはからうこと。手加減すること〉である。なるほど、忖度より「ふさわしい」というのも理解できる。「推し量り+取り計らう」のである。

   忖度か、斟酌か。そんなことは使う側の知ったことではない、とサンキューさんは考える。ソンタクのほうを上記の意味でたまたま誰かが使い、メディアが広めたから定着しただけのこと。大衆は常に辞書を持ち歩いているわけではない。早い者勝ちである。

   「日本語に関しては日本人が一番鈍感」という指摘に改めてうなずく。そのいい加減さこそが、新語や新用法が生まれるエネルギーをもたらすという洞察にも納得。「日本語に携わるもの」を自任するだけのことはある。忖度抜きで、そう思った。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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