「汚れが風合いに変わる」 丈夫で長持ち「帆布バッグ」

   帆布のバッグは街角やショップでたくさん見かけるが、須田帆布のものは、すぐに分かる。どこかが違う。

「いま、いちばん信頼できる布は9号帆布。自信を持って形にできる。丈夫さと、仕上げたときの美しさが違う」

   30歳のときに独学でバッグづくりを始めた須田栄一さん。以来30年、製作したバッグは500種を越える。

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見えない細部に施された様々な工夫


帆布のバッグ。左から、<フィールド・Dバッグ>1万185円、<スタンダード・Dバッグ>9975円、<ループ・ショルダー>9660円。

   帆布とは、木綿の平織りの生地のことで、撚った綿糸を経・緯交互に1本ずつ交差させて織る。丈夫で吸湿性・通気性に優れ、濡れると目がつまり水を通しにくい。

   須田帆布のバッグは、見えないところに手間をかけている。たとえば<ごきげんトート>の持ち手。表面だけ見ると、持ち手を縫い付けたステッチは1本しかない。これで大丈夫なのかと、よく聞かれるそうだ。

   しかし実は裏側にちゃんと、もう1本のステッチが隠されている。

「表からステッチを2本縫えば簡単です。でも、このバッグはステッチが1本でないと、かっこ悪いんです」

   表布と裏布を中表に重ねて、その間に持ち手を挟み、縁の端から端まで1回縫う。それを作業台の上に返して広げ、布が重なった部分を木槌で叩いて馴染ませて、その後やっともう1本のステッチを入れる。

ここにしかない正真正銘オリジナル


ミシンに向かう須田栄一さん。木綿の9号帆布、縫い糸はナイロン製。デザインによって布も糸もオリジナルの色に染める。


<ごきげんトート>に持ち手をつける。縫って折り返して、伸ばしたり叩いたり、ミシンと作業台を往復しながらの作業。

   もとより平織の帆布は、ほつれやすい。そのためヌイシロは多めに1センチ取り、中巻きテープで養生する。底を二重にしたり、力が掛かる部分をカンヌキ縫いで補強したり、見えない細部にさまざまな工夫がある。そうして丈夫で長持ちする、美しく面白い、かっこいい帆布のバッグが仕上がる。

「日常使うものだから、シンプルで普通のバッグがいい。帆布が他の布と違うのは、汚れが風合いに変わること」

   帆布も糸もオリジナルの染め色。ストーンウォッシュに見える帆布は、生地を傷めないバイオ加工だ。

   長年愛用されて、ぼろぼろになったバッグが修理に戻って来ることがある。縫い目をほどいてパーツに分解し、傷んだ金具や布を取り替え、補強し、また元の針穴の通りに縫い上げる。

「うちのバッグが単なるモノで終わっていないということだから、嬉しいですよ」

   いまでは人気の定番商品もあるが、型紙はほとんど残さない。人の真似をしないこと、常に変わり続けること。ここにしかない正真正銘オリジナルが、須田帆布の意地だと言う。

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