アメリカの「学校」は財政難 資金集めの手法もさまざま

   2000年に渡米したころはアメリカ発のドーナツ専門店、Krispy Kremeの人気は健在。しかし店舗数が少なく、近くに店もなかったので、出来たてのドーナツを求めてわざわざ遠くまで車を走らせたものでした。

   数年後、アメリカはアトキンスダイエットなどをはじめとするダイエットブームが到来。その人気から急激に店舗展開を行っていたKrispy Kremeもそのあおりをうけ、一気に売り上げが落ちていきました。

   また子供の肥満も問題視され、特に「小学校にある自動販売機のコーラなどのジュースも一因」と新聞などで取り上げられていたのですが、なぜそんなものを、小学校で買うことができるのか不思議でたまりませんでした。その理由が、「自販機の売り上げの一部が設置している学校に還元される」ときいて、納得したと同時にそういう収入のシステムに興味をもったのです。

   こちらではfundraisingとよばれる資金集めは活発です。例えばこの間の大統領選のときなどは「オバマ陣営はネットを通じてのfundraisingで○○ドル集めた」などという報道が頻繁にされていました。選挙のみならず、前述の自販機の売り上げのように大事な収入源となるため、学校でもいろいろ行われているのですが、具体的にどのような方法でするのかいくつか紹介してみましょう。

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賢い買い物にかかせないEntertainment Book


毎年出版。ある時期をすぎると値下がりして購入しやすくなる

   まずは雑誌の1年間定期購読。雑誌名と年間購読費がかかれたリストを渡されます。その中から自分が欲しいものを選んで注文するのですが、それだけだと売り上げ貢献度も小さいので、親の友人などに頼んで買ってもらうなどするのです。

   私は以前、知り合いの小学生の女の子に頼まれたのでちょうど定期購読しようとおもっていた雑誌をお願いしました。雑誌であれば、利用度も高いので、お願いされるほうもそう苦ではありませんし、年間定期購読すれば、毎月郵便で届くので楽チン。その上、割引率がかなり高く、毎月店頭で買うよりもかなりお得なお値段。それに教育へのfundraisingであればそう悪い気もしません。

ファストフードからMLBの試合まで


中身はこんなクーポンが満載

オバマ大統領を特集した絵本や子供向け本がいろいろ

   同様なfundraisingとして、先日、Entertainment Bookとよばれるクーポンブックの購入もお願いされたばかり。これはファストフードからレストラン、テーマパークやMLBの試合といったものの割引クーポンがたくさんはいった分厚い冊子で、こちらも賢い買い物にはかかせないので、毎年自分で買う友人もいます。

   他に有名どころはというと「クリスマス・ラッピング」。クリスマス前になると、クリスマスの柄のラッピングペーパー(包装紙)などのグッズや、ギフトが載ったカタログを渡されるそうで、そこから注文。現在、中学生の息子をもつ友人いわく、「安く買おうと思えば買えるのに、fundraisingだから、という理由で、お値段が高い」。アメリカ人の友人は毎年、「大して使わないけれど」孫のために買ってあげているとか。

   「○○ドル以上売ったら、これがご褒美にもらえるから」と先生も子供を鼓舞するそうな。ただしこれは「小さい子は騙されるけど、上の学年の子には通用しない手(笑)」(中学生の息子をもつ友人)

   こちらではたいていラッピングは自分でするものですし、お店がしてくれることがあっても、日本のようにきれいに、そして丁寧にはしてはくれず、たいてい自分で好きな包装紙やリボンを買って、ギフトを包むのです。ラッピンググッズの種類は日本よりも豊富なので、それはそれで選ぶ楽しみがあるのですが、このfundraisingは「自分でラッピングする」のが当然なアメリカならではの方式なのかもしれません。

   お金としてははいってこないものの、娘のプリスクールでは絵本の購入という方法でのfundraisingがあります。毎月、絵本のカタログが配られ、これを通じて購入すると、自分のクラスに絵本という形で還元されるというものです。ここで紹介されている絵本はハードカバーより安くてお得なpaper bookなので、これもまた買う側にとっては、ありがたくて、お手頃なfundraising。先月は大統領就任式前ということもあり、オバマ大統領や、昔の有名なリンカーンなどの子供向け伝記絵本特集が組まれていて、アメリカらしさを感じました。

   カリフォルニアはずっと財政大赤字のため、公立学校の教育費は削られ、コミュニティカレッジやUC系、およびCal State系大学の学費は値上がりする一方。そのうえこの不景気が加わり、LA Timesも「それまでは"教室の掃除"などといった見えないところから経費を削っていたのに、これからは"1クラス当たりの人数増"、"教師数の削減"、"アートや外国語のクラスの消滅"、といった目に見えるところまで、削減しなければやっていけなくなるだろう」と警鐘を鳴らしています。

   日本と違って、カウンティ(郡)やDistrict(学区)、学校などによって運営方法の違うカリフォルニアの学校。fundraisingという形での貢献にも限界がきたら、任意のdonation(寄付)が義務付けされていくのは避けられないのだろうな・・・となんだか暗い気持ちにもなるのです。

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