全国各地をながめる楽しみ -NIPPON VISION GIFT-

   松屋銀座のこじんまりしたスペースで開かれている「47都道府県からの贈りもの NIPPON VISION GIFT」は、詰めるものを吟味し選んだナガオカケンメイさんの考え方を読み解くような気持ちで楽しめる。去年開かれた「DESIGN BUSSAN NIPPON」展に続く日本デザインコミッティー主催によるもの。日本をひとつのものと見ないで、細かく分けて、きちんとひとつずつ確かめていく作業はまるで旅をするように面白い。ギフトという形をとることでとてもコンパクトに収まっている。言わば全国駅弁大会。ただしナガオカケンメイ的なので、お国自慢とばかりは言わせないユーモアがある。

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愛知の酒「ねのひ」と「ソニー」の関係は・・・


「ねのひ」と「味噌煮込みうどん」のセット

沖縄の箱にはカラフルな箸が添えられたラーメンが

   箱の素材とマークは同じながら、各都道府県ごとにケースのサイズも変えてあって、丁寧にいくつかの産物が入れられている。旅した土地のものならば中に入っているいくつかの産物はわかるだろう。そこに少しひねりが入っている。例えば、愛知県。日本酒の「ねのひ」、寿がきやの「味噌煮込みうどん」、セラミックジャパンの「インフィニティボウル」。ナガオカさんの主催するD&DEPARTMENT PROJECTのサイトの中で今回の展示のひとつずつを動画で紹介しているページがあるのでそちらを覗いてみていただきたい。

   味噌煮込みうどんはまず外せないし、愛知県というより名古屋の人が納得の一品だ。セラミックジャパンは瀬戸市の陶磁器メーカーだが、以前からプロダクトデザイナーと手を組んでのもの作りで知られる。インフィニティボウルは武蔵野美術大学教授の小松誠さんによるデザイン。デザインが突出せず、いつまでも使える形にしているところにナガオカさんはきっと近代工芸から続く歴史を感じたのに違いない。

   そしてねのひ。歴史のある蔵元だから、とナガオカさんは説明している。しかし日本のもの作りを考える時にこのねのひを選んだのにはもうひとつの意味が潜んでいるのではないだろうか。ねのひを作っているのは盛田。ソニーの創業者、盛田昭夫氏の実家にあたる。ナガオカさんがこれを知らずに選んだとは思えない。ギフトには食にまつわるものが中心に選ばれているが、さりげなく日本の近代工業の歴史が垣間みられる仕組みにしている。

 

「定番」「歴史」「風土」がキーワード


山形といえば「蔵王」。湯ノ花とお菓子の取り合わせだ

   それぞれに定番であることや歴史を持つものであること、風土とともにあることなどナガオカさんが選んだ意図が感じられる。サイト上で動画を見る前に松屋銀座の会場でひとつずつ吟味して選ばれた理由を考えてみてはいかがだろうか。その上で動画を見る。納得するだけでなく、そのさらに奥にきっとナガオカさんは深い意図を用意しているのに気づいてほしい。いや、これはまさか深読みしすぎということはないと思うけれど、どうだろうか。

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