観光地の混雑緩和に一役  期間差バカンスの合理性

   フランスの秋と冬の学校休暇は地域によって期間に差がある。これは、道路渋滞や観光地の混雑を緩和するためで、バカンス先進国ならではの発想といえるだろう。

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全国を3ゾーンに分け、学校休暇の時期をずらす


スキー場で日光浴を楽しむフランス人たち

   バカンスと聞くと夏休みのイメージがあるかもしれないが、フランスには春と冬にも休みがある。春は復活祭の時期、冬は2月から3月にかけて、それぞれ学校が2週間休みとなり、それに合わせて親も有休をとって家族で出かけたり、あるいは子どもを林間学校などに送り込んで夫婦で旅行をしたりする。秋にも万聖節の時期に1週間ほどの休みがあるので、結局、春夏秋冬、バカンスがあるわけだ。

   さて、この春と冬の学校休暇は、フランス全国を3つのゾーンに分けて、開始時期を1週間ずつ、ずらす。例えば、この冬のバカンスはニースやストラスブールなどを含むBゾーンは2月の2、3週目が休み、リヨンやモンペリエなどを含むAゾーンは3、4週目が休み、そして、パリやボルドーなどを含むCゾーンは2月4週目と3月の1週目が休みとなるのだ。なぜ、こんな期間差を設けるのかというと、高速道路と観光地が混雑しないためである。フランスに住んでいると、行政手続きの効率の悪さ、公務員の気の回らなさに呆れることが限りなくあるが、バカンスに関してはこの優れた発想、さすがフランス人は1年中、バカンスのことしか考えていない、と揶揄されるだけのことはある。

それでも避けられない道路渋滞とサービスの悪さ


子どものスキー教室も1週間単位

   ところが、バカンス時期の土曜日は、たいてい高速道路が渋滞となる。というのも、たいていのホテルや貸し別荘の予約は1週間単位で、しかも土曜の夕方にチェック・インし、土曜の朝チェック・アウトが定番なので、土曜が移動日になるのだ。2月の冬休み、別名スキー休暇中はアルプス、サヴォワ方面へ向かう高速が渋滞、特に2、3週目土曜は出発組みと帰還組みで両方向とも混雑する。テレビニュースでは必ずこの様子を実況中継し、最後にキャスターが「日曜に出発することを勧めます」と言うが、貴重なバカンスの1泊をムダにすることになるし、子どものスキー教室もたいてい1週間単位(6日間)で、土曜か日曜にスタートするので、雪山に別荘をもつリッチ層などをのぞいては土曜日に出発せざるを得ない。まあ、期間差がなければ、もっとひどい渋滞になるのだろうけど。

   さて、私はフランスに長年住みながら、冬山に行くのは今年が初めて。7歳の息子にせがまれて、私同様スキー嫌いの夫と家族3人で、3月第1週目、Cゾーンの住人しかいない時期にパリから800kmほどのところにあるアルプスのスキー場のワンルーム・アパルトマンを予約。金曜夕方に出発して中間地点でホテルに1泊。翌土曜の朝、早くに出発したので、高速もそれほど混んでおらず、何とか渋滞を回避し、スキー場へたどり着いた。

   ところが、まず、受付でアパルトマンへのチェック・インのために、列に並ばされる。その後、スキーのレンタル・ショップでは、前に10人程度しか並んでいないにもかかわらず、2人のスタッフがもたもたと仕事をし、40分ほど待たされ、無事に借りることができたものの、「支払いは別の場所で」と車で5分ほどかかる本店まで行く羽目に。この、フランス特有のサービスの悪さはバカンス地とて変わりない。

   また、帰りは土曜の朝に帰路についたところ、パリまで400kmくらいの高速上で大渋滞が発生。ほとんどが、パリとその近郊に帰ると思しきバカンス客である。確かにもっとも人口の多い地域なので、このゾーン分け、パリ地域を半分に分けた方がもっと効果が高いと思うが。<モノウォッチ

江草由香

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