【Paris発】フォアグラもかすむ人気前菜 「ゆで卵マヨネーズ」の奥深さ

   グルメの国、というイメージが強いフランスだが、国民的人気の前菜メニューはなんと、ゆで卵マヨネーズ。文字どおり、ゆで卵にマヨネーズをかけて食べるだけの、実に単純な料理(と言える?)なのだ。この国には「ゆで卵マヨネーズ保護委員会」なる団体もあり、毎年、パリのレストランの中から、最も優れたゆで卵マヨネーズを出す店を選び、表彰している。

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意外と素朴?フランス家庭料理の前菜


ゆで卵マヨネーズの基本形はこんな感じ

   フランス料理は、前菜、メイン料理、デザートの順に出て来るのが普通。前菜と聞けば、フォアグラやエスカルゴをイメージするかもしれないが、それは高級レストランの話。町中のレストランや家庭の食卓で出される前菜といえば、千切りのにんじんにドレッシングがかかっているだけのサラダ、ニシンのマリネとゆでたじゃがいもをあえたもの、そしてゆで卵マヨネーズなど、素朴な料理が多いのだ。

   B級グルメの宝庫とも呼ぶべきトラック運転手御用達のレストランでは、前菜はバイキング形式が多く、燻製ハム、サラダ類などと一緒に、殻の剥かれたつるつるのゆで卵が大きなボールに盛られている。客はこれに、勝手にマヨネーズをかけて食べるだけ、それが人気料理、ゆで卵マヨネーズなのだ。

最優秀店の卵マヨネーズは800円!


ブラッセリー・フロットは、HPで「最優秀ゆで卵マヨネーズ賞」の受賞を誇らしげにアピール

   今年、ゆで卵マヨネーズ保護委員会によって、「パリで最も優れたゆで卵マヨネーズが食べられる店」として選ばれたのはパリ1区にある、ブラッセリー(カジュアルなレストランの意)・フロットである。

   シェフのオリビエ・フロット氏は「ポピュラーな前菜メニューですが、細心の注意を払って作っています」と胸をはる。「卵のゆで時間は8~9分以内。マヨネーズは卵全体を覆い、また、付け合わせの細かく切ったゆで野菜のサラダは、野菜を歯ごたえが残るくらいの固さにゆでなければなりません」と話す。

   同店のHPには、受賞作の写真とともに、栄誉を誇るテキストが掲載されている。くだんのゆで卵マヨネーズは単品で頼むと7ユーロ(800円程度)となかなかの値段であるが、確かに、写真を見ると、サラダも添えてあって、見た目も美しい。二つに切ったゆで卵にマヨネーズがちょこんとのって出て来るだけの店も多いので、それに比べると手が込んでいる。

   ゆで卵マヨネーズ保護委員会は、この10年間で約400件のレストランをテストしたそうだが、受賞に値するゆで卵マヨネーズの条件は、1:見た目が食欲をそそること、2:マヨネーズの味付けがいいこと、3:卵が十分な大きさであること、4:付け合わせのゆで野菜サラダはジャガイモの量が多すぎず、かぶとにんじんがたっぷり入っていること、だという。

   単純に見えて奥深い、哲学好きのフランス人に好まれる料理のようです。


【プロフィル】
江草由香(えぐさ ゆか)
フリー・編集ライター。96年からパリ在住。ライターとして日本のメディアに寄稿しながら、パリ発日本語フリーペーパー『ビズ』http://www.bisoupfj.comの編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。趣味は映画観賞。

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