神奈川県の受動喫煙防止条例、経済効果は237億円の損失


「受動喫煙防止条例による外食産業の損失は大きい」(写真はイメージ)

   全国に先がけて神奈川県で2010年4月1日に施行された「受動喫煙防止条例」。県内のファストフードやファミリーレストラン、居酒屋や宿泊施設などが「分煙」や「禁煙」への対応に追われるなか、マーケティング調査会社の富士経済は、三菱UFJリサーチ&コンサルティングとの共同調査により「受動喫煙防止条例がもたらす需要変動の実態」をまとめた。

   受動喫煙防止条例が、経済活動にどのような波及効果をもたらしているかを検証した初のレポートだ。

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居酒屋、ファミレスの損失が大きい

   富士経済によると、神奈川県における経済波及効果は10年が55億円、11年は最も大きく106億円、12年度は76億円の損失で、2010年~12年の3年間で237億円を損失するとみている。

   さらに、これが全国で施行されると2010~12年の3年間で約4900億円の損失。外食産業だけで、約2300億円の損失を被ると試算している。

   神奈川県では外食産業を中心に、これまで来店していた喫煙者が来なくなり、その分の売上げが減少した。半面、喫煙者に代わってファミリー層など新たな顧客が増える効果も見込めるが、それらを考慮しても経済効果はマイナスになった。

   東京マーケティング本部の正野隼平氏は、「損失は業態によって差があります。たとえば、居酒屋やファミレスなどは影響が大きいですが、高級料理店などはそうでもない。喫煙するお客が多い店ほど影響があります」と説明する。

   たとえば、居酒屋は来店客の6割が喫煙者だった。最近はファミリー層の利用が増えている飲食店もあるが、「利用時間が短く、客単価が下がっている」という。

分煙にしても本当に客足が戻ってくるのか心配

   富士経済・東京マーケティング本部の園田卓郁氏は、この調査を通じて、「多くの経営者が分煙に対応しても、本当に客足が戻ってくるのか、心配している」と話す。

   外食産業は消費の低迷から経営そのものが厳しく、条例の基準を満たす分煙のために排気設備を整えたり、改装費用を捻出したりすることが難しいという事情もある。その一方で、条例に従わなければコンプライアンスに問題がある企業のレッテルを張られてイメージが悪くなる。

   「収益を生むか分からない投資に前向きにはなれないでしょうし、なにが最善なのか悩んでいるというのが正直なところではないでしょうか」(園田氏)。一方では、分煙のための設備投資ができないために全面禁煙で対応せざるをえず、経営を圧迫している飲食店も少なくない。

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