【書評ウォッチ】東京の街歩きを探究 「地形もの」がいま多彩に

【2012年4月29日(日)の各紙から】街歩きがブームだ。「タウンウオッチング」「路上観察」。地域の魅力再発見をうたう言葉も定着した。東京にしぼった街歩きの関連本を朝日と毎日が紹介している。

   「起伏に富む東京の地形に注目し、その特徴と面白さをマニアックに探究する試みだ」と、朝日読書欄のトップ記事で陣内秀信・法政大教授がすすめるのが『タモリのTOKYO坂道美学入門』(講談社)だ。

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坂道、凸凹、小川の跡 地形の世界を感じよう


『タモリのTOKYO坂道美学入門』

   著者のタモリは坂道が大好きで、地形や名前の由来などを確かめながら街を歩いてきた。NHKの番組「ブラタモリ」につながり、古地図を手に歩くブームの火付け役となった。

   同じ「地形もの」でも中沢新一『アースダイバー』(講談社)は宗教、民俗、考古、地質などの学問を駆使する。80年代後半に登場した江戸東京学の、江戸時代よりさらに下にある地形を見つめた。海が後退して陸地化した凸凹の低地や斜面にある湧水、神社、墓、池、花街を感じながら「聖と俗の無意識世界を描写」したという。水面が東京の奥まで侵入していたころの地形を示す「縄文地図」が武器だ。

   都内の名階段126をとり上げた松本泰生『東京の階段』(日本文芸社)も面白そうだ。『地べたで再発見!「東京」の凸凹地図』(東京地図研究社著、技術評論社)は、地形がつくられる仕組みを絵解き。田原光泰『「春の小川」はなぜ消えたか』(之潮)は、かつて渋谷区内に無数にあった水路の命運を丹念に追求した。これらの著者たちが依拠した貝塚爽平『東京の自然史』(講談社学術文庫)が文庫本で再登場したことにも陣内氏は触れている。

「東京でない東京」を疑似体験

    一方、「現在進行形の東京」にこだわった毎日は『東京右半分』(都築響一著、筑摩書房)をとり上げた。それは六本木ヒルズにも表参道にもなく、浅草や上野など東京の右半分に点在するという見方だ。その百カ所を超えるスポットを取材したルポ。ただし、「観光のためのガイドブックではまったくない」と、評者の若島正・京大教授。

   ひょいと入った路地裏や、いつ消えてなくなるかわからない雑居ビルにこっそり隠れた「東京でない東京」が集まっている。異国との、あるいはレトロとの出会いを疑似体験できそうな気配は伝わってくるが、この書評はどうも長すぎる。冗長なのは、毎週の紙面レイアウトをかえず、いつも同じスペースにほぼ同じ字数をあてはめるためだ。柔軟な編集ができないのか、する気がないのか。再考してほしい。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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