【書評ウォッチ】それぞれの宇宙本 体系的解説書と研究者の人物像

【2012年5月13日(日)の各紙から】いま「宇宙」が人の関心をひきつけている。小惑星探査機「はやぶさ」の活躍に刺激されたブームは、今月5月21日に広い範囲で見られるという金環日食で最高潮に達しそうだ。よく出る関連本の中から、日経と東京新聞がそれぞれの視点でスポットをあてた。『宇宙の謎』(岩波書店)と『宇宙はすぐそこに 「はやぶさ」に続け!』(中日新聞社)だ。

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謎に挑んだ人たちとこれからの課題


『宇宙の謎』

   『宇宙の謎』は、人類がこれまでに解明してきた「基本的な事実や仕組みを体系的に解説する」と日経の無署名記事。著者は英ケンブリッジ大天文学研究所のポール・マーディン氏。望遠鏡が発明された1600年代以降の発見に焦点を当て、宇宙観や理論などがどのように変遷してきたかを明らかにするという。

   1600年といえば、日本では関ヶ原の合戦だ。それから今までの研究を、65章にぎっしり詰め込んだ。謎に挑んだ人たちを、時代を追って紹介する。木星の衛星を見つけたのを契機に地動説を唱えたガリレオ・ガリレイ、宇宙の膨張を実証的に示したエドウィン・ハッブル、人類初の月面着陸を果たしたアポロ11号の宇宙飛行士ら。カラー図版も豊富に使われている。

   終盤は、これからの課題。宇宙にある物質の80%を占める暗黒物質(ダークマター)、地球外生命体など。知っていること、知らなかったことを整理するのに役立ちそうだ。

「エキサイティングな挑戦」を願う研究者の夢

   『宇宙はすぐそこに』の著者は、名古屋にある大同大学長で宇宙開発研究機構顧問の澤岡昭さん(73)。東京新聞の記事は人物紹介のスタイルで、30年以上も日本の宇宙開発に携わってきた澤岡さんが「もとは生物学者になりたくて、宇宙への関心はさほどなかった」ことなどを語る。

   材料工学を研究していた40歳のとき、米スペースシャトルを半分借りて宇宙実験をする計画に協力を求められたことが転機に。「以来、私の宇宙病は治りません」。

   本は新聞文化欄に連載したエッセイを再構成。世界と日本の軌跡から、食事や睡眠など宇宙生活まで幅広い話題をやさしくつづった。「限られた予算で今まで以上にエキサイティングな挑戦をしなくちゃいけません」と願う自身の夢は、世界最高齢の宇宙飛行士。もちろん、本気だそうだ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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