【書評ウォッチ】リーダー不在の世界を分析 米中が投資、通貨で敵対の可能性

【2012年7月8日(日)の各紙から】世界をどの国が引っ張るのか、グローバル・リーダーシップ。かつては米国が、良くも悪くもその立場だった。しかし、今やリーダー不在。これを分析した『「Gゼロ」後の世界』(イアン・ブレマー著、日本経済新聞社)が朝日に。「この70年間で初めて」の状況だという。では日本はどうすべきなのかを考えさせる。同じ朝日読書欄のトップ記事「欧州危機」も、世界のあり方に関連してくる。

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「夢物語」や「過去の遺物」の先には?


『「Gゼロ」後の世界』

   世界はいつだって混乱と迷走をくり返してきたが、米ソ冷戦終結後に「唯一の超大国」といわれた米国のようなリーダーはもういない。『「Gゼロ」後の世界』は、G3(米国、欧州、日本)が世界を牽引することは「夢物語」、先進主要国7ケ国によるG7も「過去の遺物」と切って捨てる。新興国も入れたG20は共通基盤がほとんどないため「機能しない」、米中によるG2は「時期尚早」。

   そのうえで、米中が世界の責任を分担するG2より、両国が敵対する冷戦2.0の可能性が高いと著者は見る。ただし、それは軍事的対立ではなく、市場アクセス、投資ルール、通貨価値などの経済的対立だという。この「新しい現実と変化の必要性に対する認識を拒む人々」が敗者になるとも警告する。評者は、エコノミストの加藤出さん。

ユーロ危機の原因は?

   欧州危機が発生して2年以上。『ユーロ・リスク』(白井さゆり著、日経プレミアシリーズ)はギリシャ危機など一連の状況を解説する。各国の競争力の差をそのままに共通通貨ユーロを導入したことが危機の原因といわれるが、『ユーロの崩壊』(ブレンダン・ブラウン著、一灯舎)は、欧州中央銀行の金融政策の間違いがバブルを引き起こし、破裂させたと主張する。

   評者の高屋定美・関西大学教授は、EUが何度も危機をバネとして乗り越えてきたことをあげながら、脱出には「しばらく時間がかかる。まだまだ欧州の行方からは目が離せない」と締めくくっている。

   欧州についてサイドから考えるなら『こんなにちがうヨーロッパ各国気質』(片野優、須貝典子著、草思社)が参考になる。案内書的な内容だが、知っているようで知らない話も。四つの国の連合体であるイギリスの中で、アイルランドは対日参戦をしなかった。国王と教会から人民が権力を奪ったフランスでは、一切の宗教色を公的な場から排除している。「国民性も文化も各国多様だということである」と、毎日で評者の伊東光晴さんが紹介している。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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