たったひと言が人生をかえることもある 伊集院静の心に響く33の言葉

   深夜、眠りに着く前に目を通したくなる、文章を通して明日の糧を得たくなる――。作家・伊集院静さんのエッセイ集『旅だから出逢えた言葉』(小学館)はそんな1冊だ。

   フランス、ケニア、アイルランド、スコットランド、スペイン、ポルトガル……。作者は40歳代の後半から50歳代の半ばまで、世間で言う働き盛りのころ、1年の半分近くは海外へ旅に出ていたという。

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世界中を旅して綴る


『旅だから出逢えた言葉』

   「旅を続けたのは、自分がどこか何かが待つ土地があるのではないかと思ったからである」と心情をあとがきにつづる。「すでに家庭を持っている人間の発想ではない」としつつ、「しかしそれが自分であることは自分が一番良く分かっている」と明かす。

   本書はそうした思いで世界中と日本を旅し、その途上でめぐり合い、心に残った33の言葉を紹介している。

   「旅は、思わぬ出逢い、思わぬ人の一言を耳にして、考えさせられることが数々ある。~耳にしたり、目にしたりした時、旅へ出ることで知り得る大きな人間の基本を知ることがあった」(あとがきより)という。

   字義通り旅の途上で出逢った言葉もあれば、実父の言葉をはじめ人生という旅の中で心に刻み付けた言葉もある。その一つ一つについて記憶のページを丁寧にめくり返しながら書き記した。

   ヘミングウェイや城山三郎、宮沢賢治、フランシスコ・ザビエル、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、王貞治、シャガールらの発言もあれば、高校時代の恩師M先生やスコットランドの宿の女主人、パリのカジノのディーラー、スペインの議事堂の老人らの一言もある。

   言葉の力、奥深さ、素晴らしさをあらためて感じると共に、生きることの基本部分についても気付かされる魅力ある随想集といえる。

   2013年3月13日、発売された。1470円。

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