【書評ウォッチ】「民主党」の存在感がなさすぎる なぜダメだったのか、研究者らが徹底検証

   自民党からやっと政権をとった民主党がなぜダメだったのか。『民主党政権 失敗の検証』(日本再建イニシアティブ著、中公新書)が読売新聞に。首相・大臣経験者を含む当時の民主党幹部や官僚らの証言を基に政権運営の教訓をあぶり出そうとした。「反自民・非自民」の新鮮な響きがやがて空しく色あせるまでの迷走と混乱、決められない政治と党内対立などをさまざまな角度から調べあげている。

   ちょうどいま開会中の国会では多数与党ペースの議事運営が続く。自信たっぷりの安倍首相と反対に、存在感があまりにない民主党。政治をどうしたら活性化できるのかを問いかける本でもある。【2013年10月27日(日)の各紙からⅠ】

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民主党の「なぜ」を考えようとトライ


『民主党政権 失敗の検証』(日本再建イニシアティブ著、中公新書)

   なんとも意欲的な著者名「日本再建イニシアティブ」は、危機克服と再建の処方せん作りを掲げて学者や研究者らが設立した独立系シンクタンク。理事長は朝日新聞OBの船橋洋一氏。福島原発事故を「民間事故調」として独自に検証したことで知られる。今度は、いわば民主党政権を検証した報告書だ。

   政権発足当初こそ与野党チェンジの期待もあったが、崩壊までの3年3カ月、マニフェストは大半実現せず、財政は再建できず、さらに米軍基地をめぐる混乱、中国との関係悪化。党内対立は深まり、あげくは参院選敗北の幕引き劇。あとには「アベノミクスと秘密情報保護」の保守安定政権が闊歩する?

   民主党論はいっぱいあるが、気鋭の研究者らがワーキンググループをつくって30回にわたる関係者ヒアリングを実施。党所属の衆院議員にもアンケートして45人から回答を得た。それらを中野晃一、中北浩爾氏らが練り上げて民主党にまつわる「なぜ」のあれこれを、客観的に考えようとトライした。

民主政治を今こそしっかり学ぼう

   で、導き出された答えは、もちろん一つだけではない。政治の素人には単純明快な解説書とまで言えない点は仕方ないか。「寄り合い所帯を克服できず」「政策実現のノウハウも仕組みも不十分のまま」と、読売評者の政治学者・宇野重規さん。書評は読後の感想を数えるようにあげている。政権交代から何を学ぶか、反省と展望の書だ。

   一方、そうした政権交代の失敗から民主政治の基本について論じた本もある。

   『いまを生きるための政治学』(山口二郎著、岩波現代全書)が朝日新聞に。民主政治のメカニズムを今こそしっかり学んで政治参加をと呼びかける。世に保守依存のムードが広がる中で、新たな政権論が必要だということらしい。評者は原真人さん。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

   J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

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