【書評ウォッチ】日本を支配するカエル男とは 「責任転嫁」「現実逃避」を究明

   きつーい男性批判の本が出た。『日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路』(深尾葉子著、講談社+α新書)が朝日新聞の読書面に小さく。家庭では妻に締めあげられ、会社ではポストにしがみつくサラリーマンのことらしい。

   「倍返しだ!」と格好よく力んでいた半沢直樹も、妻に頭が上がらないカエルの反動が欲求源とバッサリ。終身雇用や国債好きのカエル男が支配する日本社会の「責任転嫁」「現実逃避」を学際的な見地から究明したというのが、出版社サイトや推薦者のお言葉だ。いや、あたっているかも知れない。まじめな話、一面の実態をシャープに指摘している。プラス愛情もちょっぴり、あるといいのだが。【2013年12月15日(日)の各紙からⅡ】

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少し鋭く少し冷たいトカゲ学者?


『日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路』(深尾葉子著、講談社+α新書)

   大阪大大学院准教授で「魂の脱植民地化」を提唱する著者は、専業主婦をタガメにたとえてカエル男との関係を論じたことがあった。今回はカエルの側から。「タガメ妻」にカネと活力をチューチュー吸い取られながらも日本社会を支配している男たち。その体質と社会現象を分析した。

   休日の私服のセンスがダサい、転身を「女房子どもがいるから」と断念する、タクシー運転手や居酒屋店員などにはやたらと威張る、「被害者」というポジションに安らぎを感じるのがカエル男の特徴らしい。そういう面は、たしかにありそうだ。「ばからしい」と笑ってはいられないし、「ふざけるな」と怒るわけにもいかないのでは。

   ことはカエル男の見分け方にとどまらない。「安倍晋三、菅直人……日本の首相はカエル男」とまでは、言いすぎであるのか・ないのか。専業主婦を認めたがらないキャリアウーマン型の発想も色濃いけれど、極論ゆえに急所をついてもいる。一方で、水田で懸命に働くカエルやタガメを土手から冷ややかに眺める爬虫類の視線も。愛情と同情があってもいいのでは。少し鋭く、少し冷たい「トカゲ学者」の分析。違うか? 朝日の評者は無署名。

「荘子」や大乗仏教からの日本人論も

   ほかに、人のあり方については『日本人の心のかたち』(玄侑宗久著、角川SSC新書)が東京新聞と中日新聞に。

   日本人が大きなものも決して絶対化せず、対になるものを生み出し、両者を矛盾なくまとめあげてきたことを「荘子」や大乗仏教の言葉から説く。

   「心の生産性」を強調する、福島在住の禅僧作家の提言。評者は仏教心理学者の岡野守也さん。なんだか、ホッとできる。「カエル男」はどちらにひかれて読むだろうか。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

   J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

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