無糖炭酸×花の香り すべてが初めてづくし 「世界のKitchenからスパークリングウォーター」ができるまで

   キリンビバレッジは2014年6月17日、「世界のKitchenから Sparkling Water(スパークリングウォーター)」を発売した。「ほのかな花の香り」が特徴の無糖炭酸だ。モロッコの「お母さん」たちが季節の花を蒸留してつくる手作りの「フラワーウォーター」にヒントを得て作られた。

   花の香りのついた炭酸、それもお花を蒸留してつくるというのは、キリンビバレッジでは初めての試みという。誕生にこぎつけるまでの手探りを、開発にあたった同社マーケティング商品担当の図子(ずし)久美子さんと、商品開発研究所飲料開発担当の屋(おく)芳美さんの2人に聞いた。

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「通関の手続きが完了したよって聞いた時が、一番うれしかった」


マーケティング商品担当の図子久美子さん(右)と商品開発研究所飲料開発担当の屋芳美さん(左)

「通関の手続きが完了したよって聞いたときが、一番うれしかったですね」――。図子さんはこう振り返る。飲料づくりと通関というと、あまり馴染みがないように思える組み合わせだ。本人も「商品開発で通関を気にすることなんて普通ない」と笑うが、それも「初めて」尽しゆえのことだった。屋さんはかかった手間をこう説明する。
「食品として使える花はそもそも少ないですし、日本では安定供給できる原料というのもなかなかないんです。そうした制約の中で、ヨーロッパでハーブとして親しまれているエルダーフラワーが使えそうだということになったのですが……。今まで使ったことがない原料なので、輸入や加工も国内でうまくできるかわからなくて、社内アセスメントにもなかなか通らず、研究所の色々なメンバーで知恵を絞り、どうやったらいいのか首をひねりました」

   エルダーフラワーは冷凍して輸入しているが、まず原料として大量の花を扱うことは、商社にとっても前例がほとんどなかった。複数の会社に声をかけて難色を示され、「やっとやってくれるといったところが見つかった時は、救われたような気持ち」だったという。ネックになったのは、安定して量を確保できるかということに加え、これまで何度も使っている材料と違い、輸入する際に検疫に通過し、同社が定める食の安全基準をクリアできるかさえ分からなかったことだ。

「買ってからでないと持ってこられないので、そこはリスクをとりました。船が港に着いたよ、という連絡から、検疫の結果が出るまで1週間くらいあったんですけど、その間ずっとやきもきしていました。その分、連絡があった時は思わず叫んで、周りの人に言ってまわりました」(図子さん)
 

試作は100種類以上に

   こうしてようやく日本にやってきた花を製品に仕上げるまでにも、加工業者が見つからなかったり試作を繰り返したりと紆余曲折があった。

「試作は13回から14回やって、そのたびに9種類くらい用意してもらっていたので、軽く100種類以上はつくってもらったことになりますね」(図子さん)
   「繊細な味を目指していたので、バランスが重要なんです。お花なので少し青くさくなりがちなのをほんの少し果汁を足して和らげてみたり、レモンピールエキスでさわやかな酸味をたしてみたり……。ただ、とくに工場で大量につくるとなると、水に近く、原料が天然物ということで香味のぶれもあり、コントロールが難しかったです」(屋さん)

   東京・中野にある本社のマーケティングチームと横浜・生麦にある研究所の間でやりとりをするため、開発は終盤になるにつれて「体力勝負」になっていった。

「私たち(マーケティング)は感覚でものをいいがちなんですが、屋は現実を見て、できるできないを教えてくれるんです。それを知った上で、『でも、もう少し何とかならない?』と無理をお願いしているのに、送ってもらって電話でお願いするという形はどうかと思ったので、直接顔を合わせて話そうと、とにかく何かあれば足を運ぶようにしていました。早起きして、まず研究所に行って話をして、それから(本社へ戻って)リーダーに話をして……という生活でした。自宅から生麦まで2時間くらいかかるんですが(笑)」(図子さん)

「ほのかだけど、気持ちいいもの」を感じて

   こうしてまさに手探りで手間暇かけて出来上がった製品は「実は私、炭酸は苦手なんですけど…」と明かす屋さんも「これは飲みやすいです。それに、花の香りといわれると、強い香りを想像される方もいるかもしれませんが、あくまで『ほのか』。飲みやすく仕上がっていると思います」と自信の仕上がりだ。

   図子さんは製品の狙いについて、「炭酸水はヨーロッパでは水と同じように飲まれていますし、それに花の香りが足されることで『普段のんでいるものよりもいい』というぜいたくさが加わります。まずはランチシーンにぴったりだよね、というところから、食事のお供や水分補給といった飲み方へ広げていきたいです」と話し、「モロッコでも実際にフラワーウォーターを作ってみましたが、お母さんたちは本当にたくさんの手間暇をかけてフラワーウォーターをつくっています。その知恵を知ってもらいたくて、わたしたちも手間暇をかけたので、ぜひ『ほのかだけど、気持ちいいもの』を感じていただければ、と思います」と訴えた。

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