週刊「日常は音楽と共に」...本田聖嗣
ウクライナの元気印

   9月という月は、季節でいえば、夏が終わって秋が始まる時期です。 例年は、しばらく続く残暑の厳しい夏の終わり、というイメージでしたが、今年の日本は、8月の半ば過ぎから気温が大幅に低下する日もあったので、例年より秋が早く感じられ、9月に夏の気配は、あまり残っていないようです。

プロコフィエフの肖像が載った楽譜
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やる気がわき、力がみなぎるプロコフィエフ作品


プロコフィエフの肖像が載った楽譜

   欧米の9月というのは、夏の長い休暇、バカンスシーズン明けの新年度の始まりであることが多く、学生さんは進級し、芝居や音楽といったスペクタクルも、新たなる年度のプログラムがスタートして、新鮮で、ワクワクした気分になります。桜の季節である春に新年度を迎えることの多い日本では、9月は単なる「2学期の始まり」だったり、「残暑や台風といった厳しい気象条件の中で働かなければならない季節」だったするので、日ごとに短くなる日照時間と相まって、ふと秋の寂しさが身にしみたりします。

   そんなときには、元気のでるクラシック音楽は、いかがでしょうか? クラシック音楽は、他の音楽に比べておとなしい音楽と思われがちですが、中には、聴くだけでやる気の出てくるような、力がみなぎる作品も、数多くあります。

   特に、19世紀後半から20世紀にかけて活躍した、数多くのロシア圏出身の作曲家たちは、パワフルな作風を持った人が多く、お国柄を反映しているような気がします。

   その中でも、私が特におすすめなのが、セルゲイ・プロコフィエフ。1891年生まれの彼は、ほぼ20世紀前半に活躍した人で、来日経験があります。様々なジャンルで、たくさんの作品を残しました。

騎馬民族スキタイ人テーマに「不屈の魂」奏でる

   今日取り上げるのは、彼の若かりし頃の作品、「スキタイ組曲」。もともとは、パリで活躍した、ロシア・バレエ団のために、書き下ろされた「アラとロリー」というバレエ音楽だったのですが、バレエ団のプロデューサー、セルゲイ・ディアギレフによって、上演を拒否されたので、少し題名を変えて、管弦楽組曲として完成した作品です。バレエを念頭に置いていただけあって、プロコフィエフの作品の中でも、特に野性的な曲になっています。この曲を聴けば、もりもり元気が湧きます。

   ところで、題名の「スキタイ」とは、紀元前、現在の南ウクライナに勢力を誇っていた騎馬民族の名前です。実は、プロコフィエフ自身が、ウクライナ、それも現在ニュースになることの多い、ドネツク地区の出身です。そして、政治が藝術に激しく干渉した、ソビエトに翻弄された作曲家でもあります。世界が注目している、混沌とした南ウクライナの状況ですが、プロコフィエフの音楽を聴くと、ウクライナの「不屈の魂」が聴こえるような気がします。

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