「乾杯の歌」は、どのワインと? ボジョレー・ヌーボーの秘密

   11月の第3木曜日、つまり先週の20日ですが、すっかりこの日は、日本でもおなじみになりました。フランス・ブルゴーニュ地方からやってくる、その年に収穫した葡萄で作った若いワイン、ボジョレー・ヌーボーの解禁日です。今日は、それにあわせて、オペラのレパートリーの中でも、最も有名な1曲、ヴェルディの「椿姫」から「乾杯の歌」の登場です。

乾杯の歌 楽譜とワイングラス
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"輸入大国"日本 2位ドイツに大差の1位

   ボジョレー・ヌーボーが11月の第3木曜日に飲用が解禁になる、と決まったのは、1960年代で、長い歴史があるわけではありません。元は15日、と決まっていたそうですが、日曜と重なってしまうと、キリスト教の影響が強い法律を持つフランスでは、運送業者も休みになってしまうので、わざわざ木曜日、という中途半端な日にされたのです。もともと、速く醸造して、出来たらすぐ飲んでしまう、という性格のボジョレー・ヌーボーは、本来は地元だけで消費されるようなワインでしたが、品質管理の観点から、解禁日を設けて、「ボジョレー・ヌーボー来る!」という宣伝と共に、他地域に出荷したところ、これが大当たり、フランスはおろか、国際的にも有名なワインになってしまいました。

   実は、フランス本国以外で、一番ボジョレー・ヌーボーを輸入しているのは、わが日本です。人口が多いからなのか、イベントに流されやすいのか、それとも、お酒好きが多いからなのか、真相はわかりませんが、バブル期よりは減ったものの、ワインブームに支えられて、今でも、2位のドイツの3倍近い輸入量があります。

「昼間から飲む口実」として誕生?

   ところで、ワインに限らず、別のお酒の宣伝にも、使われた、ヴェルディの「乾杯の歌」を含むオペラ「椿姫」は、イタリアの作曲家の作品ですが、舞台は、フランス・パリとその郊外です。原作が、フランスの作家、アレクサンドル・デュマ・フィスだからなのです。このアレクサンドル・デュマ・フィスは、かの「三銃士」などを書いた大デュマこと、アレクサンドル・デュマの息子で、父親は、文筆で稼いだ莫大な財産を、派手に浪費して使い果たした、といわれていますから、息子は、そんな父の生活を見ていて、この物語を構想したのかもしれません。

   しかし、ヴェルディのオペラでは、主人公が「パリの夜の社交界の女王、通称『椿姫』」、というところから、イタリア当局に睨まれる可能性を考慮したのか、ストーリーは椿姫と相手の青年貴族の純愛物語風に、名前も原作とは少々変えて、なるべくスキャンダラスにならないように、配慮されています。それでも、イタリアの初演当時は、とんでもない内容、とされて、失敗だったと言われています。その後の成功を考えると、想像しにくいエピソードです。

   有名な「乾杯の歌」は、華やかな夜会のシーンである1幕に登場します。このとき、主人公達が飲んでいたワインは、一体何だったのか? と想像するのも楽しいです。

   ちなみに、ボジョレー・ヌーボーの解禁日、フランスでは、みな好き好きにお気に入りのワインを飲み、あまり、ボジョレー・ヌーボーだけを飲んでいる人は見かけません。どうやら、「昼間から飲む口実」に使われているのが、真相のようです。

本田聖嗣

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