箱根駅伝2連覇の青学大陸上部、運動疲労に効く成分「LTP」の働き解明に貢献

   アサヒビールやニッカウヰスキー、アサヒ飲料を傘下に持つアサヒグループホールディングスは2016年5月23日、「ラクトトリペプチド(LTP)」含有乳タンパク分解物に関する効果について、マスコミ向け説明会を東京都内で開催した。

   「ラクトトリペプチド(LTP)」は、1992年にカルピス社独自の発酵乳から発見された、乳由来の成分だ。運動経験のない人が体を動かしたときに生じる、疲労感や筋肉痛を軽くする効果が明らかにされている。今回の発表によると、強度な運動から生じる疲労感・筋肉痛に対しても「LTP」含有乳タンパク分解物の効果が確認され、さらにそのメカニズムの一端がわかったという。

(写真左から)コアテクノロジー研究所の中村康則所長、青山学院大学陸上競技部の原晋(はらすすむ)監督、同研究所所員の宮崎秀俊さん
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陸上選手とマウスで効果を確認

   今回の実験は、アサヒグループ傘下のコアテクノロジー研究所と青山学院大学陸上競技部(長距離)が協力して行われた。

   15年8月の同部の合宿時、マネージャー含む部員48人を2グループに分け、一方に「LTP」含有乳タンパク分解物を含むタブレットを、もう一方に「LTP」含有乳タンパク分解物を含まないタブレットを1日2回、4週間の合宿期間中に継続して摂取させた。

   そして合宿の前後に2種類のアンケートを行い、疲労感と筋肉痛に対する自覚症状について、摂取グループと非摂取グループにそれぞれどのような変化が見られるか調べた。

   1つは5つの選択肢の中から任意の項目を選ぶアンケート調査。摂取グループは非摂取グループと比べて、合宿による疲労や筋肉痛を感じている人数が少なかった。

   もう1つはVAS(Visual Analog Scale)と呼ばれるアンケート方法。測定者の実感や感覚を評価できる方法として、診療の現場でも広く使われている。「全く疲れを感じない状態」を「0」、最も疲れた状態を「100」として、回答者が自身の状態をマーキングした。このアンケートにおいても非摂取者と比べて摂取者の疲労感は有意に抑えられた。

   これらの結果が起きたメカニズムを明らかにするため、コアテクノロジー研究所は京都府立大学の青井渉助教授(応用生命科学専攻)と共同で、マウスを使った「筋損傷メカニズム」試験を行った。

   マウスに「LTP」含有乳タンパク分解物を運動前後に摂取させた上で、トレッドミル(ランニングマシン)を使ってマウスを30分走らせた。翌日にマウスの筋肉を調べたところ、筋肉中の活性酸素の発生が抑えられ、筋損傷の軽減が確認された。

   同研究所の宮崎秀俊さんは、今回の研究成果の意義について次のように語った。

「『LTP』含有乳タンパク分解物の摂取は、運動強度や世代を問わず、運動によって生じる疲労感を軽減し、日々の体調管理に有用である可能性を見出した。今後も現場の選手や専門家と協力しながら、健康で豊かな社会の実現に貢献すべく、研究に取り組んでいきたい」

   ちなみに、今回の研究の対象となった「LTP」は、アサヒ飲料が発売する血圧が高めの人向けの水分補給飲料「『アミール』WATER300」をはじめ、複数の商品に含まれている。

青学大陸上部とカルピスの意外な縁

   青学大陸上競技部といえば、2015年から2年連続で箱根駅伝を制覇したことで知られている。

   選手が汗を流すグラウンドは神奈川県相模原市にあり、コアテクノロジー研究所に隣接している。その縁でカルピスやカルピスウォーターといった一般的な商品の提供を数年前から受けるなど良好な関係が続いていたことから、自然な流れでタイアップが実現したという。

   ただし原監督は、「あまりベッタリするあまり、『ゆ着しているんじゃないか』と思われるのは大嫌い」と釘をさした。

「少し距離感を置きながら、正しく研究が行われるようなお手伝いをしたい――というのが大前提です」

   最後に同研究所の中村康則所長は、2020年開催の東京オリンピックに向けて、一般のスポーツ熱が高まっていくと予想、LTPのような素材を使った商品開発――飲料やサプリメントにも前向きな姿勢を見せた。

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