肥満を解消するなら「腹持ちのいい」日本型食生活を 食育健康サミット2016で専門家が指摘

   日本医師会と米穀安定供給確保支援機構は2016年11月10日、日本医師会館大講堂(東京都文京区)で「食育健康サミット2016」を開催した。

   食育健康サミットは、生活習慣病の予防と日本型食生活等の意義や重要性について、全国の医師や栄養士、そして国民に提案する場として毎年催されている。今年のテーマは「健康寿命延伸に向けた、肥満、糖尿病の予防・重症化予防-日本型食生活の役割-」。4人の専門家による講演とパネルディスカッションが行われ、会場に集まった医師や栄養士など655人が熱心に耳を傾けた。

「食育健康サミット2016」のパネルディスカッションの様子
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食物繊維が不足する日本人。その理由は「米食の減少」か

   この世に生まれてきたからには「寿命を全うするまで健康上の問題がない状態で日常生活を送りたい」と誰しもが考えるもの。その大敵となるのは循環器疾患や糖尿病などの生活習慣病であり、肥満は生活習慣病の第一歩と指摘されている。

   基調講演のトップバッターを務めた東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の佐々木敏教授は、厚生労働省が5年ごとに発表している「食事摂取基準」の取りまとめ役を果たした人物だ。国民が食を通じて健康な一生を送るためには、食事摂取基準が示している各栄養素ならびにエネルギーの諸量をどのように食事・料理・食品・食べ方のレベルに代えて実践するか、具体的な方法を見出さなければならないと主張する。

   佐々木教授が調べたところでは、朝食にごはん(米飯)を食べている人は朝食にパンを食べている人よりも1日全体の栄養素摂取量は好ましい傾向にある。ところが最近の日本人は食物繊維をとらなくなり、政府が掲げる目標量を下回っている。中でも穀類の減少が目立つそう。

   2番手として登場した東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科の門脇孝教授は、糖尿病の成因とその予防について講義を行った。肥満と糖尿病には密接な関係があること、全ての年代で肥満の頻度が高まっていること、戦後日本人の脂肪摂取量は4倍に増えたことなどを明かした。

   さらに門脇教授は、高齢者は体脂肪率の増加だけでなく「サルコペニア」(加齢による筋肉量低下)と「フレイル」(健康障害)に留意すべきと説く。肥満と判定された人は現体重の3%減を減量目標にして、運動療法――有酸素運動とレジスタンス運動(筋力トレーニング)を一緒に行い、腹囲を1cmでも減らすべきと話した。

   3番目に登壇した結核予防会・総合健診推進センターの宮崎滋所長は、「肥満症診療ガイドライン2016」の作成委員長を務め、療養指導の経験が豊富。「単純な計算では、脂肪組織1kgは約7200kcalなので、1日300kcal少なくするとほぼ1か月で1kg減ることになる」と説明し、同ガイドラインにのっとった食事療法をレクチャーした。ごはん食の効果については次のメリットを挙げた。

「ごはんを食べることによって低エネルギーの組み合わせが可能になります。魚や野菜を合わせやすく、脂質の少ない食事、植物性たんぱくを確保できる。バランスのよい献立が立てられ、満腹感が得やすい――。これが代表的な日本の食事です」
「日本人男性40歳代のBMI(肥満度を表わす体格指数)はずっと増えておりますけれども、お米の消費量はどんどん減っています。このことが直接関係あるか分かりませんが、一瞬の関連はあろうかと思います」

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