21世紀に誕生「なごみ系」弦楽合奏曲 ポール・カー「とても英国的な音楽」

   2019年は英国にとって、いよいよ「ブレグジット」の年となります。2年前に国民投票によって欧州連合(EU)からの離脱を決議した英国は、いよいよそれを実行に移さなければなりません。本稿を書いている時点では、まだEUとの離脱合意がなされておらず、離脱に伴い、突如物や人の交流が激しく滞る・・という事態になりかねず、経済が大混乱しないか、ということを当の英国だけでなく、世界中が注目しています。民意とはいえ、EUから離脱するという大変なことを実行してしまおうとしている、ということにおののき、やめればよかった・・という後悔とともに、「ブレグリット」という言葉も生まれています。

   日本と似た島国ゆえ、大陸とは少し距離を置き独特の文化を保持する、という英国的マインドは、日本人にも理解しやすいかもしれません。

コーンウォールの風景
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2002年のクリスマスから新年までの数日で書き上げた

   今日は、先週に引き続いて英国の音楽、それも21世紀に入ってから書かれており、とても英国的な曲をご紹介しましょう。曲のタイトルはその名も「A very English Music 」。訳すと、「とても英国的な音楽」となります。3つの曲からなる合計8分程度の短い弦楽合奏曲で、作曲したのは、ポール・カーという作曲家です。

   1961年、イングランド南部、コーンウォールに生まれたカーは、ロンドンの名門ギルドホール音楽演劇学校で声楽やオペラマネージメントを学んだあと、本格的に作曲の道に進みます。クラシック曲としては、幅広い楽器のための協奏曲や、合唱や独唱の活躍する宗教曲をたくさん書いていますが、同時に、英国映画や、グラナダ・テレビのシリーズのための音楽なども手掛けています。

   そんな彼が、英国伝統の弦楽合奏の編成で、「とても英国的な音楽」を書こうと思ったのは、いくつかのきっかけがあったようです。本人の回想によると、3曲はすべて、2002年のクリスマスから新年までの数日間で書き上げられたとのこと。1曲目のタイトルは「クックメア・ヘイヴン」。白い断崖が印象的なイースト・サセックスの海岸の風景をモチーフにしています。2曲目はその名も「コーニッシュ・エア」・・彼が故郷コーンウォール地方に寄せるノスタルジーが詰まった、ゆったりとした印象的な曲です。最後の3曲目は、「狩猟採集社会」と名付けられ、英国で最も古い村の一つであるレイコックの12月26日のボクシング・デイ(クリスマスプレゼントのボックスを開けるところから名づけられています。スポーツのボクシングとは関係ありません)の活気ある様子が描かれています。

   カーにとって「とても英国的」と感じる情景を、いわばエッセイのように切り取った曲ですが、弦楽の響きがとても心地よい、21世紀の新しい、なごみ系英国音楽です。

   クラシック音楽の分野ではあまり注目の当たりにくい英国ですが、実は、この曲のような佳作がたくさん存在します。

本田聖嗣

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