「食後すぐのごろ寝」体への影響は 専門医が話す「メリット」と「リスク」

   「食べてすぐ横になると牛になる」。こんなことわざがあるが、食後のごろ寝は体によくないという意味なのか。

   記者は食後に眠気を感じることが多々あり、環境が許せば横になって休んでしまう。もし体に悪影響ならば改めなければならない...。大腸肛門疾患が専門の「ときとうクリニック」(さいたま市)の時任敏基院長に、疑問をぶつけてみた。

食後のごろ寝って体に悪い?
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牛が食後にすぐに横になる理由

   時任院長は、「クリニックに来ている多くの消化器内科・外科のドクターに聞くと、まず『悪い』と言う意見が多く出ます」と言う。その主な理由は「逆流性食道炎」という疾患の症状悪化が予想されるからだ。

「胃液、特に胃酸が食道に逆流することで食道粘膜が炎症を起こし、胸焼け・ゲップなどの典型的な症状だけでなく、喉や口内の違和感に加え、胸部の苦悶感やせきなどの循環器・呼吸器の病気のような症状まで起こします。立位・座位であれば食道は胃よりも上にあるので、重力のために食道への胃液の逆流は少ないのですが、臥位になってしまうと胃と食道の位置関係が水平になり、逆流しやすくなるため、症状が出やすくなります」

   ただ、時任院長自身は「食後すぐ横になるのは体に『良い』というのが本音」。横になってリラックスすることで副交感神経が交感神経よりも優位になり、脳が必要とする血液量が減る。すると消化液の分泌や消化管の蠕動(ぜんどう=食べ物を胃から十二指腸、さらに奥に進める腸管の運動)が通常の状態より高まるため、「消化・吸収」に関して明らかに有利になると考えられるというのだ。

「『食べてすぐ、横になると牛になる』という言葉は、牛が食後にすぐに横になることから来ているのでしょう。牛は消化がかなり悪い状態の牧草を調理せず生で食べ、4つの胃を通じて反芻(はんすう)することでようやく消化・吸収できる状態にしています。つまり『食後すぐに横になることが消化・吸収に有利に働くことの裏返し』と考えることもできるわけです」

   なお、食後すぐ横になる際は「ソファーなどで、少し頭を高くした状態にするのが良い」。完全に横になると、食べた物と胃液・胃酸が食道に戻りやすくなり、逆流性食道炎のリスクが増えるからだ。

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